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対人関係療法を応用したリワークの特徴

[2022.07.04]

リワークのプログラムと復職準備性評価スケール』で、過去の長期の総休職期間、上司との関係が悪いと就労継続に不利である、と報告されていることについて触れました。

 

また、「復職準備性評価スケール(PRRS)」総得点、および下位尺度の「基本的生活」「症状」「職場との関係」「健康管理」が復職後の就労継続期間を有意に予測したと報告されています。

 

上記に関連して、とくに「職場との関係」の中の「14.トラウマ感情」という項目と他罰・他責性について、『発達障害特性を有する適応障害への対応』で架空事例を使って説明しました。

発達障害特性を有する適応障害への対応

「復職準備性評価スケール(PRRS)」の「基本的生活」は、起床時間、食生活リズム、戸外での活動の3つの項目があります。

また、「症状」には、精神症状、身体症状、熟眠感、睡眠時間、昼間の眠気、興味・関心など6つの項目があります。

これらの項目のほとんどが、精神症状による影響の大きさを評価しています。

 

生活リズムの乱れと、精神・身体症状、そして社会場面の回避の間には、密接な関連があるようです。

 

患者が「何もできない」「起きられない」と報告する場合でも、一日の生活の詳細をたずねるとゲームやSNS、趣味に長時間取り組めていたり、過眠、食欲の増進、性への関心のたかまりなどがみられたりと、非定型の特徴を伴うことが多い。

(中略)

「抑うつ感はないけど、身体が動かない」と表現する患者もみられる。このようにアレキシサイミア(失感情症)傾向があり、自身の感情や気分を同定することが難しいため、ストレスがかかった際の感情の変化に気づき対処することが難しい。

栗原, 大江, 渡邊. 成人うつ病患者の背景に潜む神経発達症のインパクト─対応を含めて─. 精神科治療学 37(1): 41-46. 2022

 

問診によるスクリーニングでは上記のような情報を得ることが難しいため、こころの健康クリニック芝大門のリワークプログラムでは、睡眠覚醒リズム表を用いた「社会リズム療法(ソーシャル・リズム・メトリック)」を応用して、サーカディアンリズムとホメオスタシスリズムを整える指導を行っていますよね。

 

しかし、「神経発達症(発達障害)特性」のある方が休職した場合、別の問題が生じる事があります。

 

ASD・ADHDの特性を有する患者は、休学や休職、適応できなかった場所から距離を置くことで、一旦はうつ状態から回復するも、さらなる失敗体験や傷つきを恐れ、徐々に社会場面を回避するようになる。

その際、ゲームやSNSに没頭し、食生活や睡眠などの生活リズムも大きく乱れ、そのため活力がわかず、さらに抑うつ状態を悪化させてしまうといった悪循環がみられる。

そこには過集中や注意の切り替えの苦手さ、こだわりの強さという特性も関与しやすい。結果、「自分は何もできない」という認知につながり、自責の念や抑うつ感が強まってしまうため、さらなる現実場面の回避につながるようである。

また、特性から柔軟な思考や問題解決能力に乏しく、自分でもどうしたらよいのだろうという不安も強いところに、家族や周りから社会復帰を促されカッとなって口論となるなど、大切な人との関係性も悪化しているケースも散見される。

栗原, 大江, 渡邊. 成人うつ病患者の背景に潜む神経発達症のインパクト─対応を含めて─. 精神科治療学 37(1): 41-46. 2022

 

医療機関に通院するだけで長期間の休職を続けていらっしゃった方や、休職を繰り返していらっしゃる方の中には、「治療自体が疾病利得になることに加担していないか、このような疾病利得によって慢性化を招く危険がある」という指摘に該当する方も散見されます。平島. 適応障害の診断と治療. 精神神経学雑誌 120: 514-520, 2018

 

上記の引用では「ゲームやSNSに没頭し、食生活や睡眠などの生活リズムも大きく乱れ、そのため活力がわかず、さらに抑うつ状態を悪化させてしまうといった悪循環がみられる」と指摘されています。

 

これは、『生きづらさと反応性抑うつ状態(適応障害)』で言及した「③ストレス反応だけが高い人」、つまり「生きづらさ」を抱えた非生物学的なうつ状態で、引きこもりに近い状態になっている「発達障害(神経発達症)特性」を有する人たちが該当するようです。

生きづらさと反応性抑うつ状態(適応障害)

 

アレキシサイミアと回避を支える理由づけの文脈』で、リワークで問題になる「回避と理由づけ」について解説したことがありますよね。

こころの健康クリニック芝大門でも、思い切ってリワークプログラムに参加してはみたものの、精神症状や身体症状を理由にリワークを継続できなかった方も少数ながらいらっしゃいました。

アレキシサイミアと回避を支える理由づけの文脈

 

こころの健康クリニック芝大門のリワークプログラムは、セルフモニタリングを土台としています。

セルフモニタリングを用いて、①自分との関係を改善するセルフケア、②行動の仕方を変えていくストレスコーピングスキル、③他人との関係を改善するコミュニケーションスキル、など対人関係療法の3つの要素をプログラムの中心にしています。

 

対人関係療法は、発達障害(神経発達症)特性のある人には不向きとされています。

対人関係療法の弱点を補うために、メタ認知療法やアクセプタンス&コミットメント・セラピー、あるいはメンタライジングアプローチなどさまざまな心理社会的療法を取り入れ、それらに取り組む中で少しずつ「復職準備性評価スケール(PRRS)」の得点が回復してきます。

 

リワーク担当医である院長との毎週の面談の中で、「復職準備性評価スケール(PRRS)」で取り組むべき課題を明確にし、適切な復職時期について相談しながら、休職に至った経緯の振り返りを行ってもらっています。

その際に、表と照らし合わせながら、ウェスクラー式成人知能検査(WAIS)の下位項目の評価点のばらつきと合わせて本人の特性を把握し、自己理解を促しています。

さらに、職場復帰に際して職場に対してどのような配慮をお願いすればいいかを一緒に考えています。

 

このように、こころの健康クリニック芝大門のリワークプログラムでは、一人一人に合わせた個別プログラムを重視していることで、半日のリワークでも平均3ヶ月程度での復職が可能なのです。

休職が長引いている方や、何度も休職を繰り返していらっしゃる方は、こころの健康クリニック芝大門のリワークにお申し込みくださいね。

 

院長

 

摂食障害の対人関係療法導入ガイダンス』のお知らせ

8月6(土)10時~11時45分 (休憩15分)に、摂食障害の対人関係療法を希望・検討されている方々向けに治療導入前のガイダンスを行います。

ガイダンスの後に個別面談も予定しておりますので、お早めにお申し込みください。

摂食障害の対人関係療法導入ガイダンス

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