食事制限と睡眠不足と過食の関係
こんにちは。
こころの健康クリニック芝大門で、受診相談と摂食障害の対人関係療法を担当している精神保健福祉士・公認心理師のウエハタです。
摂食障害の治療を申し込まれる方々の中に睡眠のリズムが崩れている方が多くいらっしゃいます。
こころの健康クリニック芝大門の摂食障害の治療は、「栄養状態が改善していることを前提としている」ことはこれまでもお伝えしていますが、実は「睡眠がきちんととれていること」も重要なポイントです。
お腹がすいてイライラした経験がある方は少なくないと思います。
睡眠不足で集中力や思考力が低下し、パフォーマンスが低下したという経験をお持ちの方もいらっしゃいますよね。
これは、栄養状態や睡眠リズムの乱れによって、脳の覚醒度が上がりすぎたり下がりすぎたりした結果なのです。
こころの健康クリニック芝大門で行っている対人関係療法による摂食障害の治療では、①自分の内面と向き合うこと、②自分の周りの状況に変化を起こすこと、③対人関係スキルを高めること、を目標にして治療を進めていきます。
そんな時に脳が覚醒しすぎて興奮状態だったり、ぼーっとして頭が働かない状態だと、思うようにいかず、治療がつらくなってしまいます。
このように、治療に取り組むためには栄養状態と睡眠の安定は欠かせないのですが、この栄養状態と睡眠には切っても切れない関係があるのです。今回はそのことについてお伝えしたいと思います。
グレリンとレプチン ~食事制限と過食の関係~
皆さんは、グレリンとレプチンというホルモンをご存じですか?
これらは食欲に関わるホルモンで、それぞれ以下のような働きがあります。
グレリン:食欲増進ホルモン。空腹時に分泌されます。
レプチン:食欲抑制ホルモン。食事を摂り満腹になると分泌されます。催眠効果もありますが、本業は消化のために胃腸を働かせることです。
食事制限をするとグレリンの血中濃度のベースラインを上げます。すると通常よりグレリンが多くなるので、食べすぎを助長してしまいます。食事制限を続けるほど、食べると止まらなくなりやすいのです。
オレキシンとメラトニン ~食事制限と不眠の関係~
オレキシン:覚醒と睡眠を調節する神経伝達物質のひとつ。オレキシンが増えると覚醒状態が起こります。
メラトニン:睡眠や覚醒のリズムを調節するホルモン。メラトニンは起床してから14時間後に分泌されはじめ眠りを促し、明け方には減少し目が覚めます。
良い睡眠のためには、寝る前にはオレキシンが減り、メラトニンが増えているのが理想です。ところが、先述のように食事制限によりグレリンが増え、レプチンが減少するとオレキシンが増えてしまうことがわかっています。
つまり、食事制限をするとオレキシンが増えて覚醒状態となり、入眠に影響を及ぼすのです。その結果、起床時間が遅くなったり睡眠不足が起こってしまいます。
起床時間が遅くなったりバラバラだと、メラトニンの分泌のリズムも乱れます。
このリズムが崩れると夜メラトニンがきちんと分泌されなくなり、なかなか寝付けず遅くまで起きていてしまうということが起こります。
このように食事制限が慢性化すると、過食が起こりやすくなるだけでなく睡眠にも影響を及ぼします。
食事制限と睡眠不足と過食の関係
さらに、睡眠不足の状態では、血中のレプチンの割合が低くなり、逆にグレリンの割合が増える、という調査結果もあるそうです。つまり、睡眠不足になると食欲が増し、過食が起こりやすくなるのです。
まとめると、食事制限と睡眠不足はグレリンを増やし、過食が起こりやすい状態を作る。
グレリンの増加は、オレキシンを増加させ覚醒状態を作り睡眠不足や睡眠リズムの乱れなどの影響を及ぼす。
そして、睡眠不足はグレリンを増やして。。。。
過食には、「心が求める過食」と「体が起こす過食」の二種類があります。
「体が起こす過食」をなくしていくためには、栄養状態の安定と睡眠リズムの乱れや睡眠不足を解消することが重要、ということですね。
次回は、睡眠のリズムを整えるためのヒントをお伝えしたいと思います。