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特定不能の摂食障害

[2013.06.24]

摂食障害患者の30〜60%が、「特定不能の摂食障害(ED-NOS)」として知られる「非定型の摂食障害」に該当すると言われています。

・「やせ願望」はあるが「肥満恐怖」ははっきりしない
・「挫折体験」や「喪失体験」を欠く
・対人関係文脈での維持因子が不明確
・自分なりのルールやこだわり
・強迫的な過剰運動、不安と食事制限

など、摂食障害ともそうでないとも見える摂食障害・辺縁群は、「特定不能の摂食障害(ED-NOS)」と診断されます。

 

たとえば、体重が標準体重の85%以上あるけれども拒食症の診断基準を満たす場合や、むちゃ食いや排出のエピソードの頻度以外は過食症の診断基準を満たす場合、あるいは噛み吐き(チューイング)や食事のあと嘔吐してしまう(排出障害)などが含まれます。

WHOのICD-10では

・非定型・拒食症
・非定型・過食症
・他の心理的障害と関連した過食(心因過食も含む)
・他の心理的障害と関連した嘔吐(心因による反復性嘔吐)
・他の摂食障害(異食症を含む)
・摂食障害・特定不能のもの

という分類になっており、摂食障害だけでなく食行動・食習慣の異常が含まれていて、「特定不能の摂食障害(ED-NOS)」の病態や精神病理に摂食障害と同じような一貫性がみられないことから、これらは臨床的に摂食障害とは別に扱った方がいいとも言われています。

 

同じような問題が「むちゃ食い性障害(BED)」でもあり、「むちゃ食い性障害(BED)」と診断された患者の多くが実は「過食症・非排出型(BN-NP)」だったり、本当の「むちゃ食い性障害(BED)」ではなくしばしば食べ過ぎる肥満の人だったりすることも指摘されています。
つまり、病態や精神病理を考慮しない症状のみでの診断や分類は限界があるということですね。

しかしながら、一般の人には病態や精神病理はわからないので「本に書いてあった症状と同じだったから対人関係療法を受けたい」と治療を求めてこられる場合がすごく多いのです。

実際、生育歴や背景の精神病理を考慮し、構造化面接による診断をすると、拒食症や過食症、むちゃ食い性障害など摂食障害の診断を満たさず、あえて摂食障害とするなら特定不能の摂食障害という他はないという患者さんが過半数以上を占めています。

 

たとえば、症状レベルからの診断では「過食症・排出型(BN-P)」なのに精神病理は、どう考えてもせいぜい「過食症・非排出型(BN-NP)」、もしくは「むちゃ食い障害(BED)」のはずなんだけど…と首をひねってしまうケースが増えているのです。
(実際は、習慣や衝動の障害、発達障害の二次障害としての食行動異常)

それらの患者さんは、準備因子である病前性格や誘発因子や持続(維持)因子のアセスメントを行ってみても、対人関係文脈や出来事と症状の関連が不明瞭で、衝動性の方向が食行動や食習慣に向いている、あるいは思考を現実と思い込む認知的フュージョンしか指摘できないので、これでは対人関係療法を希望されても治療が出来ないのです。

 

ある報告では拒食症と過食症を合わせた有病率は発症危険性の高い若い女性の1.5〜10%であり、過食症と拒食症の比率は2:1とされており、さらに非定型摂食障害や特定不能の摂食障害は拒食症・過食症など摂食障害の2倍に達するとされていますし、摂食障害の治療を受けている患者の約半数は非定型もしくは特定不能の摂食障害だったという報告もあります。

摂食障害の有病率や発生頻度は医療機関から報告される症例数に基づいているのですが、摂食障害患者は医療機関を受診しないことも多いため、実際の患者数は拒食症が人口10万あたり5〜8人、過食症は10万につき11〜13.5人程度と言われています。

すごく少ない数字ですが、摂食障害は文化背景の影響を受けるため最近、摂食障害が増えていると言われていますが、古典的なメランコリー型うつ病に替わりうつ病特有の病理を欠如した現代型うつ病や新型うつ病が台頭してきた変遷と同じ事が摂食障害の分野でも起きていて、拒食症や過食症と似たような症状を呈する他の病態が増えたのかもしれませんね。

院長

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