新しい習慣
摂食障害から回復後、私の新しい習慣となったものの一つにヨガがあります。特に大きなきっかけというきっかけはなかったのですが、ふとやってみたいなと思い始めました。
スポーツジムや教室に通ったりするのではなく、DVDなどの動画を観ながら家で行っています。
これまでスポーツジムに入会しても長続きした経験がなかった私ですが、「自宅ヨガ」は思いの外続いています。その理由は、「気持ちがいいこと」だと思います。やはり、つらいことや苦しいことは続かないですよね。
もう一つは「義務にしないこと」でしょうか。私の場合、好きで始めたことも気が付くと、「やらなければ」という考えにスイッチしていることがあると分かったので、今は「やりたいかどうか」という軸で考えることを大切にしています。
これは日常の中でも意識して言葉を選ぶようにしています。例えば「今日までに〇〇しなきゃ」ではなく、「今日までに〇〇したい」というようにです。大きな違いはないように聞こえるかもしれませんが、実際にやってみると違いを感じられると思います。
「〇〇しなければ」と言ってしまうとその瞬間に、自分に対する義務が生じます。何だかその考え以外に自分に与えられた選択肢はないように聞こえて、苦しい感じがしませんか?けれど「〇〇したい」と言うと、自分の意志を確認でき、「じゃあやろう!」という気持ちが湧いてこないでしょうか?これも実は治療の中で学んだことです。
話を戻しますね。
ヨガをしていると、やるたびに毎回新しい気づきがありとても新鮮な気持ちになります。例えば、同じポーズでも左右で動き方や感じ方が違うことに気づくことがあります。また、自分の頭や腕、足の重さの感じ方や、景色の見え方、湧いてくる感情なども、その日その時によって違います。
自分の心や身体の声に耳を澄ましてみると、全く同じということはなくて、その時その時の出会いがあるんですね。そうすると、じんわりと、与えられたこの身体すべてに対して、「ありがとう」と思えてくるんです。骨や筋肉、臓器、目や耳や鼻(感覚器)、自分の体を構成している細胞一つ一つに対して、「今日もよろしくね」とか「一日ありがとう」というように。
ちなみに、私がヨガを始めたのはダイエットやシェイプアップのためではありません。体重測定は年1回程度ですし、ウエストや太もものサイズを測ったりもしません。私の観ているDVDもそれをうたったものはありません。
病気の思考の囚われが強いときにヨガを始めていたとしたら、私もやはりダイエットを目的にヨガをしていたと思います。しかし、おそらくそれでは続かなかっただろうとも思います。痩せることを目的にしてしまうと、やっぱりいつかつらくなってしまうと思うんですね。
加えて心や身体の声に耳を澄ませる、なんていうことにも気づかなかったでしょう。「痩せなければ」という目先の目的に囚われて心地よさを感じる余裕もなくなってしまうと思うのです。最近読んだある本にはこんな言葉がありました。「その人の準備ができた時にヨガと出会う」と。
アニータさんは、身体や心の声に耳を澄ませる大切さをこのように書いていますね。
体の飢えと心の飢えを識別する能力は、乱れた食行動で苦しむ人たちが学ばなければならないとても大切なスキルです。
アニータ・ジョンストン著「摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語」より
ここでは空腹感を例に挙げています。
二種類の空腹感があるというのは本当です。ひとつはお腹からくるもの、もうひとつは心からくるものです。
お腹の空腹は食べ物で満たされなければなりませんが、心の空腹は愛情や心の糧で満たされなければなりません。身体的なお腹の空腹と精神的な心の空腹の違いや、食べ物へのニーズと精神的な糧へのニーズの違いを認識してそれぞれに対応した術を学ぶと、もう太ることに怯えて神経をすり減らす必要がなくなります。
アニータ・ジョンストン著「摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語」より
そこでアニータさんは、「いつ飲食して、いつやめるのかを教えてくれる体の感覚とのつながりを取り戻すための、体を意識するエクササイズを紹介していますよね。
自分に「お腹が空いていることは、どうやってわかる?空腹だと教えてくれる体の感覚は何?」と聞いてみてください。よく、「頭がふらふらして、めまいがする」とか、「お腹がグーグー鳴る」といった答えを聞きます。
それは空腹のシグナルではなく、腹ペコのシグナルです!空腹のシグナルはもっとかすかなものです。お腹が空いている状態と腹ペコの状態の違いを認識することも大切です。腹ペコの状態まで待つと、食べ過ぎる可能性が高くなってしまいます。そして、「ほらね、空腹のときに食べちゃいけないのよ!」と思ってしまい、落胆して制御不能のように感じてしまいます。そしておそらく次も(腹ペコで)我慢できなくなるまで食べることを許さず、また食べ過ぎてしまい、落胆の悪循環を自分でつくり出してしまうことになるのです。
空腹を告げる体の感覚は十人十色です。同体上部の緊張を感じる人もいれば、お腹が空になった感じがする人もいますし、胸部に張りを感じる人もいます。ですから、他人がどのようなシグナルを受けているかではなく、自分のシグナルを探すことに集中してください。練習を重ねるにつれ、とてもかすかな形であっても感じ取ることができる、とても明白で間違えようのないシグナルになっていきます。
アニータ・ジョンストン著「摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語」より
摂食障害から回復した今、私はどんな風に食事を摂っているでしょうか。それは、何も考えず無防備に食べたいものを食べたいだけ食べているのとは少し違います。しかし、体重をコントロールしようとして何かを制限しているのでもありません。
アニータさんがとても分かりやすく説明してくれています。
体のサインを信頼できるようになり、身体的に空腹なときに食べて満腹になったときにやめれば、食べたいものを自由に食べても太らないことに気づきます。(中略)体に任せれば、いずれ、体はより栄養価が高くて、細胞がうたい喜ぶような食べ物を自然に選ぶようになります。体は、あなたや社会が良いと言うものではなく、体自体が必要なものを欲するようになるのです。
アニータ・ジョンストン著「摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語」より
ヨガという私の新しい習慣も、食べるということも、自分の身体や心の声に耳を澄ませることで自分自身とのつながりを深め、同時に周囲(人、もの、環境など)に対する感謝の気持ちを深めてくれる日々の営みではないかと感じています。