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摂食障害からの回復を妨げていること

[2023.02.22]

こんにちは。

こころの健康クリニック芝大門で、受診相談と摂食障害の対人関係療法を担当している精神保健福祉士・公認心理師のウエハタです。

 

前回の『摂食障害から回復する変化を起こすには』で、こころの健康クリニック芝大門の対人関係療法は実行期に入る準備が整ってから治療がスタートすることと、そのためには回復の妨げになっていることに気づき、変化を起こし始めることが必要であることをお伝えしました。

 

では、“実行期に入る準備が整った状態”とはどのような状態なのでしょう。

 

そのことを説明するために、まず実行期についてお話ししたいと思います。

『摂食障害から回復するための8つの秘訣』には実行期についてこう書かれています。

“今の状態を変えたいと認識しており、実際に行動して、計画を立て、異なるやり方を試している。”

 

つまり、実行期は今の状態を変えるために必要なことを実行に移し、試行錯誤している時期なのです。この試行錯誤を対人関係療法の中で一緒に取り組んでいきます。

 

ここで気を付けていただきたいのは、“今の状態を変えるために必要なこと”とは、過食や過食嘔吐を我慢するということではないということです。

 

“今の状態を変えるために必要なこと”つまり、回復していくために必要なことは、食べたい気持ち痩せたい気持ちが出てきたときに、その気持ちの奥にある本当の問題に向き合うことです。

 

ところが、乱れた食行動に振り回されている方たちは、食べたい気持ち瘦せたい気持ちを優先する行動をどうしてもとりたくなるのです。それが、今回のテーマである「回復を妨げている行動」です。

 

「回復を妨げている行動」とは、例えば、食事制限、強迫的な運動、体重測定、ボディチェック、儀式的な食べ方などです。過食用の食事を準備しておくことやいつでも過食できる生活習慣なども含まれます。

 

“実行期に入る準備が整った状態”とは、こういった回復を妨げている行動に気づき、その行動を変えていこうと変化を起こし始めている状態なのです。

これは、食べたい気持ち痩せたい気持ちに流されてしまうのではなく、その気持ちに向き合おうとする心の姿勢を整えるということでもあると思います。

前回の『摂食障害から回復する変化を起こすには』で「回復することも変化です」とお話しましたが、治療期間中変化を起こし続ける心の姿勢を整えることとも言えるかもしれません。

 

以上のことを踏まえて、回復を妨げている行動の一つである食事制限についてお話してみたいと思います。

 

こころの健康クリニック芝大門の対人関係療法では、栄養状態が改善していることが治療開始の前提になります。

そのため、受診相談の際に栄養状態の改善の必要性もお話しているのですが、多くの方が治療の申し込みを躊躇されます。この病気の背景にある「やせ願望」や「肥満恐怖」から、食事量や内容を調整せずにはいられなくなっていらっしゃることを思えば無理もないことだと思います。

 

それでも栄養状態の改善が進んでから治療を開始するのは、先ほどお話ししたように、食事制限は本当の問題に向き合うことの妨げになるからです。

では、どのように妨げになっているのでしょうか。

その説明をするために、過食の種類についてお話ししてみます。

過食にはいくつかの種類がありそれぞれ対処法(治療法)が異なります。

 

〇拒食症からの『回復期の過食』

〇生活リズムや食生活の乱れに起因する『飢餓過食』

〇出来事に反応した『気持ちをなだめ麻痺させるための過食(ストレス反応解消としての過食)』

〇『心や魂の飢えとしての過食(嗜癖(クセ)になった過食)』

 

このうち『回復期の過食』と『飢餓過食』は身体反応としての過食ですから、精神療法で扱うことが難しいのです。この過食は、バランスよく食事をとることで体を安心させてあげるしかありません。

 

気持ちをなだめ麻痺させるための過食(ストレス反応解消としての過食)』と『心や魂の飢えとしての過食(嗜癖(クセ)になった過食)』は対人関係療法などの精神療法で扱っていくのですが、その際、飢餓過食があると以下の問題が起こっていきます。

 

まず、精神療法は頭(脳)を使いますから、その分エネルギーを消費します。そのため栄養状態が整っていないと、とても疲れてしまい治療がつらくなります。また、エネルギーを使いますから体重が落ちてしまうこともよくあり、そうなると治療を中断せざるを得ません。治療の中断は一種の挫折体験になってしまいますので、できる限り避けたいですよね。

 

次に、「飢餓過食(体が求める過食)」と「摂食障害症状としての過食(心が求める過食)」がごちゃ混ぜになって見分けることが困難になるということです。また、飢餓状態では自分の考えていることや感じていることに気づいたり客観的に捉えることが難しく、治療がうまくいきません。そしてこのことも治療の中断につながりかねません。

 

繰り返しになりますが、対人関係療法では乱れた食行動の奥にある本当の問題に取り組んでいきます。食べたい気持ち瘦せたい気持ちが起こった時に、何を考えどんな感情を感じているのかに注意を向け、それを指針に自分が本当に必要としていることのために行動を起こしていけるようになることを目指します。

 

栄養状態の改善なくして、やせ願望や肥満恐怖の奥にある、この病気や症状を維持させている本当の問題にたどり着くことや解決することは難しいのです。

 

こころの健康クリニック芝大門の対人関係療法では、治療導入前にガイダンスとサポート面接を行っています。ガイダンスでは治療の道筋をお伝えし、サポート面接では実行期に入る準備を整えられるようにサポートしていきます。

 

変化を起こすことには不安が伴うものです。

受診相談は申し込みを迷われているタイミングでもお受けしております。お電話かメールフォームからお問い合わせください。

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