慣れ親しんだ考え方や考え方のパターンに気づいていく
『グループ対人関係療法』でウィルフリィは
動揺する状況を心にとめるようにし、そのときに起こっているもの(考え)や気持ちに注目してみてください。
そのときに起こっているものに、です。
これがうまくできるようになると、自分の悩みを隠すために食べ物を利用しなくてすむようになってくるでしょう。
食べ物で自分を麻痺させるのではなく、自分の気持ちに注意してはっきりつかめるようになる、つまり自分自身との関係を改善し、他人との関係を改善できれば、ネガティブな気持ちをコントロールするために食べ物を利用しなくてすむようになるでしょう。
自分の気持ちがうまく扱え、他人との関係もうまくいくようになるほど、過食はへっていくでしょう。
と書いています。
そのために
過食を始めたり、食べることをコントロールできないと感じたりしたときは、いったんストップして自問することです。
「何が起こっているのだろう。このきっかけになった対人関係上の問題は何だろう。それによって自分はどんな気持ちになっているのだろう。この状況を何とかするためには、どうしたらよいのだろう。」
はじめは難しいかもしれません。
このプロセスは「衝動の波に乗る」と呼ばれ、「自分自身をふり返る(内省)」ことがここでも重要になります。
次に過食したい衝動に駆られたら、「衝動の波に乗った」ままで5分から10分ほど内面を探り、気がついたことを書き出してみましょう。衝動の波に乗りながら、次のように自分に問いかけてみてください。
「私は何を感じているだろう」
「衝動を感じる直前には、何が起きていただろう」
「何を避けようとしているのだろう」。
避けようとしているのは、気持ちかも知れませんし、やらなければいけない何らかの課題かもしれません。
また、「本当に必要としているのは何だろう」と問いかけてもよいでしょう。
(中略)
4つ目の秘訣で紹介した困難な思考と気持ちに対処するための練習と、これから7つ目の秘訣で紹介する周囲に助けを求める方法を試してみるとよいでしょう。
コスティン・他『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店
【「私」は、“○○”を、[……]と感じている」】、あるいは【「私は「自分が[……]という考えを持っている」ことに気づいている」】【「私の中に[……]という考えがある」】などの思考に対して、行動を選択するために思考を吟味してみるプロセスが必要になります。
これがバイロン・ケイティの「4つの質問」で
・それは本当ですか?
・それが本当だと、絶対に言い切ることができますか?
・その考えを信じると、あなたはどうなりますか?
・その考えがなければ、あなたはどんな人になりますか?
このプロセスをノートに書き出してみて
☆ …ねばならない(べき思考/完璧主義思考)
☆ 白黒思考/全か無か思考
☆ 自分よりも相手、周囲にあわせようとするところ
☆ 自分よりも人の気持ちが大切と思っているところ
☆ 自分自身への過度の期待や厳しさ
があるかどうかを自分に問いかけてみます。
しかし『8つの秘訣』にもあるように、なかには、習慣で過食する人もいます。
過食の本質は「ストレス解消のための過食」ではなく、「習慣や嗜癖(クセ)になった過食」なのです。
あまりに長い間過食を続けてきたのですっかり当たり前になってしまって、特に何かきっかけがあるわけでもないのに過食をしてしまうようになるのです。
このような人にとっても「自分自身をふり返る(内省)」ことが必要です。
マインドフルネスは、その衝動や渇望から目をそらしたり、その勢いに圧倒されたりせずにそれを観察し、取り組むための「すぐれた道具」となる。
(中略)
さらに、マインドフルネスを通じて、人が馴染みのある条件行動、習慣行動をとる代わりに、メタ認知の気づきによって「全体像」を見ることができるようになる。この気づきは私たちに選択する自由があることをわからせてくれるのだ。
(中略)
自動的、習慣的に反応するのではなく、もっとうまく対応するために、このスペースへの気づきを身につけるのがマインドフルネスの練習なのである。
『マインドフルネスに基づく嗜癖行動の再発予防』日本評論社
慣れ親しんだ考え方や考え方のパターンに気づくことで、『思考や感覚に「しがみつき」、一体化することなく、そのとき体験していることを観察する能力を強化する』、つまり、感情を感じて衝動に触れていながら、巻き込まれないでいることが、摂食障害行動を変化させる原動力になるのですよね。
院長