愛着スタイルと気質・性質
近年では、成人の愛着スタイルは
安定型(自律/安定型)
愛着軽視型(拒絶/回避型)
とらわれ型(不安/アンビバレント型)
おそれ型(未解決型 or おそれ/回避型)
に分けられることが多いようです。(『成人のアタッチメント・スタイル』参照)
「安定型」は、過去の愛着関係について良い面も悪い面もともに評価でき、記憶への近接が情緒的な混乱をもたらしません。
このタイプは、治療関係を安全基地として利用することができると言われています。
「愛着軽視型」は、愛着対象から拒否される不安や怖れを感じることはなく、愛着関係を否認・軽視し、親密な関係を拒みます。
治療関係では、理想的な関係を語りながらも詳細に触れず、知的・観念的な語りが多く、情緒的な要素が少ないといわれます。
「とらわれ型」では、他者との親密な関係を希求し、それが失われることへの不安を持つため、常に他者に迎合的に合わせることで関係を維持し、距離を近づけようとします。
そのため治療関係では、過去の関係の悪い側面ばかりを語り、情緒的に巻き込まれ、話の一貫性を保つことが難しく、時に怒りの表出が多く、治療者からの共感・保護を求めるとされます。
「おそれ型」では、愛着軽視型のように表面的には他者から一定の距離をとり親密な関係を持たない一方、とらわれ型のように親密な関係を希求します。
しかし、他者から拒否される不安を感じているため、自らの苦痛や葛藤、不満を抱え込み、他者に向けないように抑圧しています。
そのため治療関係では、過去の想起に苦痛を伴うために回避し、自己への原因帰属(自責感・罪悪感)を行いやすいとされます。
これらの「愛着スタイル」とクロニンジャーの「気質」「性質」、そして「3つの次元の幻想」について、パーソナリティ障害や精神疾患をまとめると図のようになります。
(『「幻想」と3つの対人関係』参照)
『愛着スタイルと社会適応』で、高い「自己志向性」や「協調性」が精神疾患やパーソナリティ障害の発症を抑えていると書きましたが、この際に働くのが、「防衛機制」といわれる意識的・無意識的な心理操作です。
「防衛機制」は、抑圧、隔離、否認、逃避、退行、反動形成などで、防衛機制によって社会に適応できている場合や、不適切な行動が実は自らを守るために必要な防衛機制の結果である場合もあり、未熟な防衛、神経症的な防衛、成熟した防衛に分けられます。
成人の愛着スタイルと防衛機制の関係では、見捨てられ不安の高い人(とらわれ型(不安/アンビバレント型))も親密性の回避の高い人(愛着軽視型(拒絶/回避型))も未熟な防衛スタイルが高く、見捨てられ不安の高い「とらわれ型(不安/アンビバレント型)」の人では、未熟な防衛機制に加え、神経症的な防衛スタイルが高く成熟した防衛が低い、という特徴があり、さらに親密性の回避が高い「愛着軽視型(拒絶/回避型)」の場合も成熟した防衛スタイルが弱いという特徴も示されています。
成熟した防衛には、不快感を押さえるために何か建設的なことをするという「昇華」、苦しい状況でもその面白い側面を見つけるといった「ユーモア」、困難な状況の内容を予測し対策を立てるといった「予測」、活動の妨げになるような感情を抑えるといった「抑制」など意識的に自らの心理状態を操作する特徴があります。
不安定な愛着スタイルは容易に変えることが出来ないと理論上はいわれていますが、上記のような成熟した防衛スタイルのように自分が自分の心の主人になるということで、経験を通じて変容する可能性があると考えられますよね。
対人関係療法で取り組んでいくのは、まさにこんな感じですよね。
院長