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対人関係療法による治療のすすめかた〜「治療の土台作り」〜予備面接2

[2012.04.20]

三田こころの健康クリニックで専門に行っている対人関係療法による治療や、対人関係カウンセリングは

摂食障害:神経性大食症(過食・過食嘔吐)(神経性食欲不振症・拒食)
気分障害:うつ病・うつ状態、気分変調性障害(慢性うつ病)、双極性障害
不安障害:トラウマ(衝撃的な体験)/PTSD(心的外傷後ストレス障害)社交不安障害
思春期(不登校・交友関係)妊娠中や産後のうつ状態、夫婦パートナー関係

などが適応になります。

 

たとえば摂食障害や気分障害、不安障害の診断であったとしても

思い込み(妄想)やこだわり(強迫観念・強迫行為)
・回避傾向
・強い希死念慮

がある場合は、対人関係療法での治療が難しいんですよ。

発達障害の要素を持った人では、思い込みやこだわり、そして回避傾向が強く、対人関係療法での治療中に、困難な局面に遭遇することが頻繁にあるんですよ。

 

対人関係療法は病的認知や症状には焦点を当てず、現実の対人関係の出来事と感情を整理していきますよね。

ところが発達障害が背景にある人達は

・自分の気持ちが把握できず、言語表出も困難
・ファンタジーへの没入(現実と空想が区別出来ない)
・変化が苦手

という特徴があるため、

○自分の気持ちをよくふり返り、言葉にしてみる
○自分の周りの状況(とくに対人関係に関すること)に変化を起こすよう試みる

という対人関係療法での治療に難渋する場面が起きやすいのです。

 

スコット・スチュアートという対人関係療法の治療者は、

数回を持って完了することの多い初期アセスメントでは、患者の対人関係療法への適合性を判断し、患者の精神状態、愛着スタイル、コミュニケーションパターンをアセスメントすべきである。
アセスメントは、抵抗や依存など治療における問題を予想するために有益であり、それらの問題を最小化するために治療アプローチに変更を加えるよう治療者を導いてくれるはずである。
アセスメントを終えて、その患者が対人関係療法に向いているとの結論が下せるまでは正式に対人関係療法を始めるべきではない。

と書いています。

しかし、発達障害の要素があるからといって、対人関係療法での治療適応から除外することも出来ないし、対人関係療法の効果を感じてもらうにはどうしたらいいかとずいぶん悩み、水島先生とも相談したりしていました。

 

アメリカでは、社会スキルトレーニング(SST)や生活スキルトレーニング(LST)など行動療法的な療育が主流ということなので、対人関係療法でも用いられている「行動活性化技法」である、「支持的技法(教育、助言・提案、限界設定、直接的援助、モデリング)」を中心に、治療準備性を高め、治療環境の調整を行いつつ、「決定分析」や「ロールプレイ」を教育的に指導する「予備面接(治療の土台作り)」をはじめたんですよ。

「予備面接(治療の土台作り)」では、「コミュニケーションのあり方」という自作のプリントを用いて

実際の対人関係療法と同じように直近の出来事や気持ちを題材にしながら進めていますよね。

 

対人関係療法は感情を指標に変化をおこしていく右脳的な治療ですよね。
左脳優位という発達障害の特徴の緩和するために、左脳の暴走を修正するのが、認知行動療法的な治療で、右脳を刺激するのが、対人関係療法ですよね。「予備面接(治療の土台作り)」でやっていくのは、まさにこういうことなんです。

ときどき、「いつ対人関係療法の本番に入るんですか?」という質問を受けることがあります。
水島先生や坂本先生のクリニックでは、初診の後すぐに対人関係療法の初期が開始になりますが、三田こころの健康クリニックでは、スコット・スチュアートのマニュアルに則り、「初診→アセスメント面接→初期→中期→終結期」と進んでいきます。

スコット・スチュアートがいうアセスメント面接で、コミュニケーションスタイルとか、愛着(アタッチメント)のアセスメントを行い、対人関係療法の初期に向けて加速しながら助走していく感じで「治療の土台作り」と呼んでいるんですよ。

前回のエントリー「予備面接(治療の土台作り)」で触れたように、対人関係療法による治療そのものですよね。

なぜなら、対人関係療法で目指していくのは

という事ですから、「予備面接(治療の土台作り)」と見比べてみると対人関係療法の目標が総論であり、「予備面接(治療の土台作り)」が各論的な構造になっているのがおわかりいただけると思います。

院長

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