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対人関係療法で取り組む自分との向き合い方

[2015.07.27]

対人関係療法による治療も終盤に入ってくると、「ストレスはないはずなんですけど、過食が止まらないんです。汗」とおっしゃる患者さんが、かなりいらっしゃいます。

ストレスには、出来事などの外側のストレスと、その受け止め方とらえ方の内側のストレスがあります。

おそらく患者さんは、大きな出来事は起きていないとおっしゃりたいのですよね。
こういう時期だからこそ、自分自身との向き合い方が大切になってきますよね。

対人関係療法の効果は、まず対人関係面に現れます。
対人関係のストレスが軽くなり、自分のコミュニケーションにどうにか自信がついてきて、まず精神的に楽になります。
その後、だんだんと食行動が正常化してきます。
「症状はストレスの表れ」ですから、食行動の方がストレスよりも先によくなるということは考えられないのです。
水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店

よく読むと、「精神的に楽になる」段階と、「だんだんと食行動が正常化」する段階の間に、ちょっとだけギャップがあるようですよね。

それについて水島先生は

対人関係に少し自信がついてきて、対人関係に対処することで症状をコントロールできるという感覚がわかってくると、だんだん心が平和な時間を持てるようになります。
そういうときこそ、自分の身体と対話するチャンスです。
これだけの病気を生き抜いてくれた身体に感謝しながら、少しずつ「身体の声を聴く」練習をしていくとよいでしょう。
水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店

「自分の身体と対話する」「身体の声を聴く」ということを勧めておられます。

 

また『摂食障害と感情の自己コントロール』で触れた「自分の感情をありのままに認める」ことができない人に対して、水島先生は「自分の心の保護者になる」ということで

ですから、自分自身に話しかける言葉を、「もしも大切な友人にこういうことが起こったら自分は何と言うだろう」と考えた言葉にする、というのがここでの提案です。
苦しい気持ちになっているときは、自分がどういう言葉を自分にかけているかを観察してみましょう。
そして、自分はそんなことを大切な友人に言うだろうか、と考えてみてください。
自分の心の保護者としての自分を時々は意識することで、心の健康を最優先させるということの意味がだんだんわかるようになってくると思います。
水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店

と、『正しく知る不安障害』でも紹介されていたバイロン・ケイティの「ひっくりかえし」に似た方法ですよね。(苦しみの終わり - The Work of Byron Katie」参照

ここが対人関係療法が光彩を放つところで、自分自身との折り合いも対人関係として扱うのです。

 

一般に感情よりも考え(認知)の方が意識的に捉えやすく、状況に対して自動的に反応する感情よりも行動の方が随意に統制しやすく変容は起こしやすいのですが、感情を押さえ込んだり、回避したりするとその反動で感情調節不全におちいり、衝動的な行動を取りやすくなってしまいます。

感情を指標にして現状を変えていくために、「自分の気持ちをよく振り返る」「身体の声を聴く」「自分の心の保護者になる」など、対人関係療法の背景にある「自分自身との向き合い方」「自分自身との折り合いのつけ方」についても取り組んでいく必要がある、ということですよね。

院長

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