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季節性感情障害〜「冬季うつ病」と「夏季うつ病」

[2014.09.22]

秋立つ日、よめる「秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる」

古今和歌集にある藤原敏行の和歌のように、秋には、物寂しさや寂寞感などを感じやすくなりますよね。

 

リバウンド「過食/むちゃ食い」が起きやすい季節』で書いたように、日照時間が短くなることによって、神経伝達物質であるセロトニンの分泌も減ることが、このような「祭りの後(ポスト・フェストゥム)」的な感覚とつながっているのかもしれませんね。

 

日照時間の減少とともに症状を呈する気分障害は、「季節性感情障害」として知られています。

季節性感情障害とは

・連続年にわたり
・明らかな社会的・心理的な誘因なく
・特定の季節に限局して
・抑うつ状態を発症する

周期性気分障害のサブタイプで、DSM-IV-TRでは「反復性エピソード」の経過の中で特定用語として「季節型」としてあげられており、双極I型、双極II型、大うつ病性障害反復型に対して適応されます。

一般的には「冬季うつ病」が知られていて、秋から冬にかけての病相期には、夕方から増強する抑うつ症状とともに、食欲亢進、炭水化物過食、体重増加、睡眠の増加(過眠)など「非定型の病状」がみられるとされますが、それ以外の季節には自然寛解するような周期的な反復性エピソードが特徴とされています。
(非定型うつ病については『気分反応性を伴う気分障害』参照)

有病率は人口の1〜10%と言われ、女性に多く、高緯度の地域や冬季の日照時間の短い地域での発症率が高いと言われますが、日本では1〜3%と欧米に比べ少ないと言われます。

 

よく考えると自然界の動物では冬季には、体温を保つために代謝を上げる必要がありますが、食糧が減るために、脂肪として貯蔵しやすい炭水化物や動物性脂肪を摂取し、活動を抑制して冬眠しエネルギーの消費を防ぐ、というメカニズムがあり、冬眠前の状態とオーバーラップするようです。

つまり「季節性感情障害」の「冬季うつ病」は、生物学的リズムが優性のため、社会リズムと合わせられなくなっているのが問題のようですね。

このような冬季うつ病に対しては、高照度光療法が第一選択になるようですし、自然寛解もあることがよく知られています。

 

一方、「季節性感情障害」のなかには、夏期に抑うつ症状が見られる「夏季うつ病」タイプも少数ながら存在することが知られています。

この「夏季うつ病」は食欲不振や不眠など、内因性うつ病に似た病像を呈すると言われていますが詳細についてはよくわかっておらず、12例の「夏季うつ病」の報告をしたヴェーアらは発症には温度(暑さ)が影響しているのではないかと考察しています。

漢方でいう「湿邪」「暑邪」の影響での身体のあちこちや頭の重だるさや倦怠感、食欲や消化機能の低下、不眠や胸の苦しさなど、大うつ病に似た症状を呈することもあり漢方薬が著効することもよく経験します。

 

ということは「季節性感情障害」である「冬季うつ病」や「夏季うつ病」は内因性の精神疾患ではなく「身体因性の抑うつ状態」の可能性がありますよね。
このことはほとんど本にもかかれていませんから、三田こころの健康クリニックのように身体症状に対しての対応も可能な医療機関での診断が必須ということですよね

院長

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