双極性障害の対人関係-社会リズム療法(IPSRT)による治療〜その1
もうひとつのブログで書いていた「双極性障害の治療法〜(対人関係・社会リズム療法)とは」の補遺です。
そもそも、双極性障害の生涯有病率は0.6〜3.3%前後とされ、成人期早期に好発するといわれていますよね。
発症は、早期発症型(児童期および思春期・青年期)と成人期発症型に分けられ、10代半ばの思春期・青年期に発症するタイプは成人期発症型と似ていますが、10歳前後の児童期に発症するタイプは、落ち着きのなさ、反抗、問題行動、対人トラブルなど、気分の不安定さが非定型的に表現されることが多いといわれています。
児童期に発送したタイプが成人期に移行するのかどうかの議論はありますが、成人であっても、児童期発症タイプと似た躁病エピソードを呈することもあり、定型的でない病像の理解が重要視されています。
経過だけでなく診断についても混乱があり、うつ病エピソードで発症することが多く、しばしば単極うつ病と誤診されやすい双極II型だけでなく、4つの病型の間には移行がみられ、発症初期には特定不能の双極性障害であったものが、経過と共に双極II型に発展するケースもみられます。
つまり、双極性障害は以前からいわれていたようなカテゴリーではなく、スペクトラム、あるいはディメンジョンとして捉えた方がいいのではないか、というのが最近の議論です。
そうなると、治療も
・初発のうつ状態にどう対応するか
・併存障害にどう対応するか
・双極性うつ病にどう対応するか
などなど、かなりバリエーションが必要になってきますよね。
いずれの場合にも、薬物療法が選択されることが多いのですが、『精神科治療学』に掲載されていた鷲塚伸介先生と加藤忠史先生の連名の論文の抄録を抜粋してみると
薬物療法の効果がもっとも期待できるのは、躁病相急性期においてであり、ここでは他の治療法の追随を許さない。
しかし、うつ病相および維持療法期においては、薬物療法がまず行われることが当然としても、その効果は限定的である。急性期のエピソードから回復後は、心理教育を通して患者に病気を理解し受容してもらうことが再発予防のためにまずなすべきことであり、それが薬物療法の効果を引き出すことにもつながる。
あわせて、ストレスマネージメントや生活リズムの安定化のために、認知行動療法、対人関係-社会リズム療法など、心理社会的治療を組み合わせて行うことも維持療法期に重要である。
と、薬物療法だけでは病相のコントロールが困難であり、不安定な病状や再発が繰り返される場合も少なくないことから、心理社会的な要因に対する精神療法的アプローチが必要ということで、対人関係-社会リズム療法にも触れてありました。
これから数回に分けて、双極性障害の精神療法的なアプローチとその中で対人関係-社会リズム療法がどう位置づけられるかを考えていきます。
次回は、双極性障害のさまざまな表現型、摂食障害(過食や過食嘔吐)などの合併症について書いてみますね。
院長