双極性障害の対人関係-社会リズム療法(IPSRT)による治療〜その2・合併症
成人の双極性障害は、約67%がうつ病相で始まり、明らかな躁病相が出現して、双極性障害の確定診断ができるまで平均、10年程度の経過が必要と言われていますし、児童期・思春期・青年期では、大うつ病エピソードを呈した約20〜40%が5年以内に双極性障害の病像を示すと言われています。
双極性障害のうつ状態と単極性うつ病の症状はほぼ同じですから、双極性障害であっても、うつ病の治療をせざるを得なくなりますよね。
また双極性障害は、パニック障害、社交不安障害、強迫性障害などの不安障害を併発しやすいため抗うつ薬治療が行われることになりますが、病像がより複雑で不安定になりやすいことが指摘されています。
抗うつ薬による治療については、
・躁転の危険があること
・急速交代型に移行すること
・抗うつ薬が一旦効いた後に効果がなくなること
・複数の抗うつ薬で効果がえられないこと(治療抵抗性)
など、最終的には双極性障害には利益をもたらさないことが示されています。
併存疾患については、もう一つのブログでも書いたことがありますので参照して下さいね。
また、双極性障害の気分の不安定さや衝動性にともなう過量服薬、リストカット、アルコール、異性関係、過食や過食嘔吐、買い物衝動(浪費)などから、境界型パーソナリティ障害や摂食障害と誤診されることも多いようです。
児童期では、ADHD、素行障害、反抗挑戦性障害や、自閉症スペクトラム(広汎性発達障害、高機能自閉症、アスペルガー症候群など)の併存で、複雑な病像を呈することも知られています。
とくに、アスペルガー障害や高機能自閉症、特定不能の広汎性発達障害など「自閉症スペクトラム障害」の抑うつ症状は、環境や負荷により大きく急速に変化することがあるので、双極II型障害(躁症状が目立たない「双極性障害」)と診断されていることが多いようです。
このような複雑な多様性を呈する双極性障害ですから、精神科医にとっては、自分の診断・治療能力のすべてを試させる疾患であるといっても過言ではないという意見もあるんですよ。
とはいうものの、双極性障害が回復するとはどういうことか?って、ご存じのドクターって、ほとんどいないんですよ。
双極性障害の治療の根幹である生物学的な要因と心理社会的な要因の両方を扱うことによる症状の安定だけでなく、ストレスをコントロールし、日常的な社会生活を維持することや、回復をモデルとした対人関係-社会リズム療法のような治療が必要とされているんですよね。
院長