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リワークプログラムと職場復帰

[2023.02.06]

職場復帰支援プログラム(リワーク)は、メンタル不調による休職者が復職に向けた準備をするためのプログラムです。

 

リワークの知名度やリワークの有効性の認識は高くなっていますが、それでも精神科医や産業医の中には、リワークをご存じない先生や、リワークの存在意義に懐疑的な先生もいらっしゃるようです。

 

たとえば精神科臨床に携わっていらっしゃる先生の中には、主治医はメンタル疾患の症状が復職可能なレベルまで改善しているかどうかの判断をすればいいのであって、病状の回復が業務内容とマッチしているかどうか、つまり、復職の判断は産業医や会社がすべきである、という考えをお持ちの先生もいらっしゃいます。

 

あるいは産業医の先生の中には、産業医は診断・治療を行わないので、業務可能なレベルまで症状が回復しているかどうかは主治医が負う臨床判断であり、元の業務を行うためのリズムの調整が会社で行う職場復帰プランである、という考えもあります。

 

精神科臨床と労働可能レベルのギャップを埋めるリワーク

このように精神科主治医の臨床判断と、職場産業医の認識の間には、いまだにギャップがあるのです。このギャップを埋めるのが、職場復帰支援プログラム(リワーク)です。

 

しかし、リワーク支援を利用しているのは休職者の1%以下と言われています。

その理由として、「リワーク施設は都市部に集中していて利便性が高くないことや、リワーク支援プログラムやその有効性の認知度の低さ」などが関係していると指摘されています。(中村『復職のためのセルフ・トレーニング・ワークブック』金剛出版)

 

一方、リワークプログラム側の問題も指摘されています。

 

うつ病リワーク協会に登録しているリワーク実施施設が増えている一方で、治療の質に問題のある施設の存在や、いまだに旧来の居場所的デイケアをリワークと称している施設もあることなど、うつ病リワーク協会では危機感をもって認識されているそうです。

実際、産業医として休職した社員の復職判定面談で話を聞いていても、「それリワークなの?」と首をかしげざるを得ないようなプログラムを受けていらっしゃる社員さんもいらっしゃるのが実情です。

 

令和5年(2023年)5月末に開催される予定の第6回日本うつ病リワーク協会年次大会では、リワークの柱である治療技法の洗練を課題として「治療の高度化・多様化 医療リワークだからできること」をテーマとして掲げられています。

 

医療リワークでの治療

医療リワークでは、どのような治療が行われるのでしょうか。

 

筆者が支援してきた多くの休職者も、それまではストレスがあってもうまく乗り越えたり、やり過ごしたり、自分なりに対処できていました。

しかし、さまざまなストレスに直面した時に、対処法のバリエーションが少なかったり、新しい対処法を見つけられなかったり、助けを求められなかったりして行き詰まってしまいます。そして、何とかしようと努力すればするほど空回りして、困難と疲弊の悪循環にはまってしまうのです。

つまり、休職は、努力する力はあるものの、課題に直面したときに適切な目的や対処法を考えられず、有効な解決行動がとれなくなった結果といえるでしょう。

(中略)

ここでは、なぜ努力する力を発揮できなかったのかを、自分の考え方や対人関係、業務遂行などの特性から分析し、休職原因を把握します。

そして、今後はどんな場面で、どう行動したらよいか、どんなセルフマネジメントをしたらよいかを、再発防止策として検討します。

再発防止策を実行して復職し、働き続けるために、本来持っている努力する力を発揮してください。

(中略)

面倒だなと思うことにも集中して取り組み、難しいことには時間をかけて、頭を働かせて完成させるということが、働ける状態にまで回復するための第一歩です。

中村『復職のためのセルフ・トレーニング・ワークブック』金剛出版

 

優しい言葉で治療目標が説明されていますよね。

上記の解説で医療リワークでの治療として上げられている項目は、まず自己分析(セルフモニタリング)ですよね。

セルフモニタリングを用いて、自分自身の認知特性や対人関係特性を分析することが、最初の課題になります。

 

そして、次に同じような状況に向きあったときには、どのように考え誰に支援を申し出てどのように対処したらいいのかという認知・対人関係・出来事に対する必要なコーピングスキル(セルフマネジメント・スキル)を身につけることが、医療リワークでの心理社会的治療ということになります。

 

こころの健康クリニック芝大門のリワークの特徴

こころの健康クリニック芝大門のリワークは、週4日半日のショートケア・プログラムですが、週5日フルタイムのデイケア・プログラムで行われているリワークと遜色のない復職率と再発防止率を上げています。

その理由は、こころの健康クリニック芝大門のリワークは心理社会的治療に特化しているからです。

 

こころの健康クリニック芝大門のリワークで行っている心理社会的治療では、まず、認知療法、メタ認知療法を学習し、自分の認知特性や対人関係特性、あるいは休職前の対処法についての理解を深めていきます。

そして、厄介な思考や受け入れられないと感じた感情について、認知療法、メタ認知療法に加え、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)を用いて向き合い方を学んでいきます。

 

休職経緯についての振り返りを行いながら、社会認知や対人関係についての特性の理解につなげ、自分と他者の言動から心の状態を理解するメンタライジング・アプローチとともに、トラブルにならないコミュニケーションのとり方を学んでいく対人関係療法などによって、さまざまなコーピング(対処)スキルを身につけていくのです。

 

こころの健康クリニック芝大門のリワークは、数ある治療技法の中でもリワークにおいて実施する施設が増加しつつある対人関係療法を実践しているリワーク施設として、第6回日本うつ病リワーク協会年次大会長の先生からシンポジストとして登壇して欲しいとオファーがあったので、謹んでお受けする予定にしています。

 

院長

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