「空腹感、満腹感がわかりません」
「今までどうやって普通に食べていたのかわからなくなった」
「普通の一人前の量がわからない」
摂食障害の患者さんからよく聞かれる言葉です。
アニータさんは人間にとっての食べること、そして飢えの意味についてこんなふうにおっしゃっていますよね。
私たち人間のほとんどにとって、食は、単に体に栄養を与える以上のことを意味しています。愛されていないと感じたときに、食べることでそれを埋め合わせようとしたりします。食べ物は慰め、温かさ、そして安心感さえも与えてくれるかもしれません。(中略)
私たちは誰もがある程度、食べ物を体への栄養源とは違った用途で使っています。しかし、食べ物を唯一の対処法として使うようになってしまうと、それは問題です。そうなると、愛情を得るためや、心理的ストレスに対処するため、怒りを伝えるため、そして悲しみに耐えるために同じことを何度も繰り返して、「馬鹿のひとつ覚え」のようになるからです。
このサイクルにはまってしまった女性は、飢えを感じたときに、それをすべて食べ物への飢えだと勘違いしてしまうのです。
アニータ・ジョンストン著 「摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語」より
アニータさんは、飢えには種類があるとおっしゃっています。
体の飢えと心の飢えを識別する能力は、乱れた食行動で苦しむ人たちが学ばなければならないとても大切なスキルです。
体の飢えと心の飢え。この二つはどう違うのでしょうか。
では、私たちは皆、一生運び続けるふたつの容器を持っていると想像してみてください。ひとつは食べ物と水を運ぶためのひょうたん型の容器で、もうひとつは人生を有意義で充実したものにしてくれるものを運ぶハート型のバスケットです。
ひょうたん型の容器は体の糧が必要なときに食べ物で満たされます。そして、バスケットは心の糧が必要なときに、他人からの注目、愛情、感謝など、心と魂が必要とする「食べ物」で満たされます。
乱れた食行動に苦しんでいる人たちの多くは、「体の飢え」も「心の飢え」も同じ「空腹感」ととらえてしまうようなのです。
身体的でない飢えをただ文字通りの空腹感ととらえていると、それを満たすために食べ物を使い続けてしまい、いつまでたっても飢えは満たされません。
しかし、飢えの正体を明確にして、何に飢えているのかをより深く認識できるようになれば、ふさわしい糧を見つけることができるでしょう。
大切なことは、カロリー計算や体重に頼った「頭で食べる」食べ方ではなく、身体と心の声に耳を澄ませ、あなたが本当は何に飢えているのか、あなたの欲しているものは何なのかをわかるようになることなのです。そのためには、
乱れた食行動からの回復への道のりには、自分の体と調和が取れている状態、つまり体の英知が尊重され、体への信頼が回復された状態に戻ることが必要不可欠です。
そこにたどり着くには、まず、どうやったら体からのメッセージを受け取れるのかを学ぶ必要があります。
そこでアニータさんは、「体を意識するエクササイズ」の一つとして、特定するのがより簡単とされている“喉の渇き”を感じることを最初に紹介していますよね。
どのくらい食べれば太らないのか、どのくらい食べれば今の体重を維持できるのかといった情報を求める患者さんは少なくないようです。けれどもどれだけ本を読んでも、どれだけインターネットで調べても、そこに真の答えはありません。
大切なことは、まずあなた自身が自分の心と身体を信じて耳を傾けることなのです。
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2021年4月から毎週土曜日に診療を行うこととなりました。診療時間についても、10時~13時半、14時半~16時半と変更になります。
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