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摂食障害の自己内対話の練習の仕方

[2016.09.26]

対人関係療法ではコミュニケーションを重視しますよね。
相手の言ったことを聴き、理解し、それに対する自分の考えや気持ちを把握して言葉で相手に伝える、相互のやり取りの中で、自分の内面出起きるプロセスを自己内対話あるいは個人内コミュニケーションと呼びます。

 

たとえば、「私(me; 客観的された自己)」が、「もう起きる時間だ!寝てると遅刻する!」と語りかけると、「もぅちょっと寝ていたい、あと5分だけ。。。」とか「しまったっ!起きなきゃ!!」と行動主体である「わたし(I; 主体的な自己)」が反応しますよね。

 

コミュニケーションを重視する対人関係療法では、

(1)私は何を観察しているのだろうか。
(2)私は何を感じているのだろうか。
(3)私は今、何を必要としているのだろうか。
(4)私自身、あるいは他者に対する要求は何だろうか。

という、「自己内対話を声にして伝えること」がローゼンバーグの非暴力コミュニケーションですよ、と教えて、過食嘔吐をともなう過食症や、過食だけのむちゃ食い症では健康な部分と摂食障害の部分の対話に取り組んでもらいますよね。

 

ところが何人もの患者さんから、「2つの部分を客観的に観察する「私(me)」の視点が難しい」「摂食障害の部分と健康な部分の違いがわからない」「自分の内面との対話の仕方がわからない」などの質問を受けることがあるのです。

過食を始めたり、食べることをコントロールできないと感じたりしたときは、いったんストップして自問することです。
「何が起こっているのだろう。このきっかけになった対人関係上の問題は何だろう。
それによって自分はどんな気持ちになっているのだろう。
この状況を何とかするためには、どうしたらよいのだろう。」
はじめは難しいかもしれません。
ウィルフリィ『グループ対人関係療法』創元社

多くの患者さんは過食のスイッチが入ってから慌てて内省(自分の内面をふり返る)をしようとするのですが、普段から、『「私」は、“○○”を、[……]と感じている』『「私」は“○○”は[・・・]になって欲しい』と認識する練習をしておかないと、過食のスイッチが入ったときのぶっつけ本番では難しいですよね。

動揺する状況を心にとめるようにし、そのときに起こっているもの(考え)や気持ちに注目してみてください。
そのときに起こっているものに、です。
これがうまくできるようになると、自分の悩みを隠すために食べ物を利用しなくてすむようになってくるでしょう。
ウィルフリィ『グループ対人関係療法』創元社

とくに「「私」は、“○○”を、[……]と感じている」は、身体感覚などの「内受容感覚」に対しても練習しておく必要があります。
三田こころの健康クリニックですすめているのは寝る前のボディスキャンです。

 

摂食障害の患者さんは「内受容感覚」への気づきが苦手で、『[……]と感じている』が「解釈」や「評価(ジャッジメント)」になってしまい、その思考を信じて(客観的に吟味できずに)

・状況判断なくすぐ行動に移してしまう(性急自動衝動性)
・少ない報酬でも早く得ようとする(衝動過敏性)

衝動特性によって過食やむちゃ食いなどの行動に移してしまいます。

 

「摂食障害の部分」を本当の自分と思い込んでいる状態から、「健康な部分」「摂食障害の部分」の両方に気づくことができる『私は自分が[……]という考えを持っていることに気づいている』『私の中に[……]という考えがある』の認識の仕方によって、「観察する自分(私:me)」を確立していくことが治療全体を通しての課題になるのですよ。

 

摂食障害行動を使って日常のほかの問題に対処したり、問題を避けたりする必要がなくなることを目指すために「解釈」や「評価(ジャッジメント)」は行動を邪魔するわけではないということを理解してもらうために、「“立てない”と強く念じながら、立ち上がってみてください」とか「“私はダメな人間なので、部屋の後ろまで歩いて行けない”と声に出しながら、部屋の後ろまで歩いてみてください」みたいなワークもやったりしますよね。

これらのことはすべて、自分の心(考えや気持ち)と向き合い「健康な部分」「摂食障害の部分」の闘いを終わらせ、自分自身との関係を調和していく、対人関係療法の土台ですから、しっかり理解してノートに書き出しながら練習してみてくださいね。

院長

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