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過食症の「自己批判」と回復に必要な「自己受容」

[2016.11.14]
20回未満の対人関係療法の治療で過食や過食嘔吐が消失した患者さんたちと面接していると、回復した人に共通する3つの特徴があることに気がつきました。 その3つとは、
(1) クロニンジャーの七因子のうち「自己志向」が高まっている。 (2) 自分の目的が明確になり、周りの人とのつながりが感じられている。 (3) 自分の考えや気持ち、感覚への気づきが高まり、自分に優しくできている。
ということでした。   クロニンジャーは「自己志向」「協調性」を高めることで、生まれ持った気質をコントロールすることが可能になり、環境や状況へ対処できるようになる、としています。 『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』では、「自己志向」を自尊心と解釈して「自分という存在や自分のやり方に対する信頼感とでも言うべきものです。」と説明してあるように、対人関係療法でいう自尊心は「自己肯定感」や対人スキルに対する「自己効力感」、つまり自分自身に対する自己評価と他者評価の蓄積のことで、クロニンジャーの「自己志向」とはちょっと違うようです。   「自己志向性」は自己の次元の成長を表すもので
○ 自己受容 ○ 価値と目的の創造 ○ 価値と目的に沿った行動
の3つの要素からなります。 また「協調性」は社会の次元での成長で
○ 他者受容(自分と考えの違う他者を認められるようになる/相手の価値観を尊重する) ○ 共感(相手の立場になって感じることができる)・協力
を表します。 これらは上記の(1)と(2)に相当しますよね。 よくみると回復した患者さんたちの(3)は、「自己志向」の中の「自己受容」と関連がありそうに思えますよね。   過食症や過食嘔吐のある患者さんは、自分自身を非難し、他者と比べて落ち込むなど自己批判が高いのが特徴です。ところが、自己批判が高い患者さんには、対人関係療法の効果が充分に発揮できなかったと報告されているのです。 ですから過食や過食嘔吐から完全に回復した患者さんたちは、違うプロセスを通って回復されていったようなのです。その鍵となるのが、自己批判と正反対にある「自己受容」のようです。   「自己批判(自分へのダメ出し)」は、日本では「反省」という形で根深く浸透していますよね。 逆境や背水の陣に身を置くことで健康な人であれば、一次的には立ち直ることが可能かもしれませんが、うつや不安障害を引き起こしやすいことが知られており、
・失敗恐怖と行動回避が高まる。 ・ネガティブ・バイアスが高まる。(思考へのとらわれ) ・ポジティブなことを当然と考える。(感謝の欠如)
など、長い目でみるとデメリットの方が多いことが指摘されています。 一方、「自己志向」は
1)自分の行動に対して自分自身で責任を引き受けることができる。(他者や境遇のせいにすることがない) 2)さまざまな場面で経験を積むことができる。 3)状況・場面に応じて適切な行動を自然にとれるようになる。
とされています。   クロニンジャーは生まれもった「気質」と、環境や対人関係の中での学習で身につけた「性格」が パーソナリティを形成すると考えていますから、3)はまさしくパーソナリティのことですよね。 また2)は対人関係療法で培っていく「自己効力感(有用感)」ですから、1)の責任を引き受けることができることが「自己受容」に関連しそうで、これが過食や過食嘔吐からの回復のカギになっているみたいですよね。(『摂食障害の治療でジャッジメントを手放すこと』参照) 院長
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