対人関係療法と『8つの秘訣』の関連
食べものとの関係と、どのように人間関係を築くかは、そちらもその人の特性と「人となり」に基づいているので、自然に似てきます。
あなたの食べものとの関係について少し考えてみてください。
『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店
と書いてあります。
以前、このブログで『なぜふつうに食べられないのか』から引用しながら、食と人間関係の関連を考察しましたよね。
食べものと対人関係が似てくるのは、その人の「人となり」つまり、出来事に対する心の姿勢(向き合い方)と関連するのです。
摂食障害、とくに過食症やむちゃ食い障害の治療を考えるときには、「準備因子」として環境的要因(家庭環境や社会・文化)や、個人的誘因(性格特性や他の精神医学的併存疾患)などを把握します。
これが「人となり」ということです。
そして発症してすぐなら「誘発因子(発症のきっかけ)」、発症から時間が経っていれば「維持因子」をみていきますよね。
『8つの秘訣』でも
○ あなた独自の摂食障害を発症した要因
○ あなたの摂食障害の症状を引き起こし続けている要因を知ろう
と、「やせたい」「太るのがこわい」の裏にある誘発因子と維持因子に目を向けるワークが取り上げられています。
たとえば、体重と体型、そのコントロールへの過大評価やとらわれなど、個人的要因(自分自身との折り合い)が強く関与している人には認知行動療法がいい適応になりますし、あるいは情緒的巻き込まれ(過保護・過剰な情緒反応)など家庭環境要因(家庭という社会との折り合い)が維持因子なら、家族療法が適応になります。
ちなみに対人関係療法では、期待の不一致(不和)が維持因子になることが多いのですが、過食症だけに適応される問題領域として「評価への過敏性」があります。
評価への過敏性は
○ 自分が傷つく評価を怖れる(学習性無力:不和の「行き詰まり」の段階)
○ 自分の価値が下がる「かもしれない評価」を気にする(対人関係過敏(脳内劇場))
の2つがありますので、対人関係上の出来事と症状が関連していて、維持因子が対人関係要因≧個人的要因であれば、対人関係療法による治療が可能なのです。
こうした関連性があるので、人間関係の築き方を変えると食べものとの関係も変わってくるし、逆もそうだと言えるのです。
回復への道を進めながら、ときどきこの練習問題に立ち戻ってみてください。
そうすると、あなたの食べものとの関係と人間関係の両立がどう変わってきているかがよくわかるでしょう。
『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店
ということで、『8つの秘訣』でも対人関係療法でも、「食べものとの関係と人間関係」に対して取り組みを行っていきます。
このような悪循環は、患者さんが本来抱えているものであり、注意が過食に向けば向くほど、自分のストレスは何か、どうすればそれを解決できるのか、という本質的な問題から目を背ける結果になってしまうのです。
(中略)
過食から先に治そうとすると、「本当の問題」の解決に使うエネルギーが無駄に使われてしまって、結局は治りが遅くなります。
『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店
と書かれていますが、だからといって、対人関係療法で食べ物との関係を扱わないわけではありません。
対人関係の中で感じたストレスを食べ物で解消しようとする心の動きと、しっかりと向き合う必要があります。
ですから過食が起きたときに、何がストレスだったのか、を振り返り
○本当はどうなってほしかったか?
○そのためにはどうしたらいいか?
を対人関係療法では考えられるようにしていきますよね。
またストレスに感じた出来事がなかった場合は、どんな考えが自分にとってストレスと感じたのか、を振り返り、現実と脳内劇場を区別する、取り組みも必要ですよね。
院長