摂食障害の症状が起きたきっかけに注目する
[2015.11.30]
対人関係療法では摂食障害の症状はストレスの表れとみて
なぜその症状が表れているのかということを理解しなければ、対処することができません。 (中略) 症状がひどくなったときに「もう絶対に治らない」とその波にのまれるのではなく、症状がひどくなったときこそ「自分のストレスを見極めてやろう」と積極的に取り組んでいく姿勢が必要です。 この姿勢は病気が治ってからもずっと必要になるものです。 『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店といいます。 この摂食障害の症状に対する位置づけの仕方は
今は、食べものを制限したい、嘔吐したいと感じるときには、何らかの警告なのだということがよくわかります。 必ず何か他の問題が関連しているので、立ち止まって、心の中を探るのです。 (中略) 今では、狂う強い気持ちは警告シグナルで、それがあるときには何かしらの問題が起きているか、注意を向ける必要のある何かが起きているのだとわかるようになりました。 ですので、苦しくなったときには、何が起きているかを自分なりに探って、どう対処するのが適当かを考えるようにしています。 『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店『8つの秘訣』でも同じですよね。 『摂食障害と向き合う心の姿勢と自尊心』で、「摂食障害の部分を、「悪い」異物のように退治する必要のあるものとは考えないでください。」と説明しました。 対人関係療法も同じように症状を抑えつけるのではなく、その誘因をみていくということを書きましたが、もう1つ考えておくべき一面もあるのです。 それは摂食障害の症状を「悪いもの」とジャッジすることで、当然のことながら、症状をとり除きたいと強く思いようになり、症状に注目することで、症状がさらに強く感じられるため、ますます症状に注目し、除去したいと望むようになる、という悪循環が生じるからなのです。 『8つの秘訣』には
過食と嘔吐などの行動は、言いようのない苦しい気分や記憶を麻痺させて忘れたり、身体のコントロールを取り戻すための方法になっている場合がよくあります。 (中略) こうした行動は、ある種の安堵にも似た感じをもたらしますが、それは一時的なものにすぎません。摂食障害は決して何も癒やしませんし、問題を厄介にするだけです。 (中略) そうこうしているうちに、食べることに関連した不安、罪責感、恥ずかしさの「解消」法だったはずの摂食障害行動が、食事とは関係のない他の領域へも広がっていきます。 (中略) もとはと言えば食べものと体重にまつわる否定的な気持ちに対処するための方法だった摂食障害行動が、今や、否定的な気持ち全般に対処するための方法に拡大してしまったと言えます。 『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店摂食障害の中でも過食や過食嘔吐などの症状は、症状をなくそうとすることで悪循環に陥ってしまいます。 症状そのものが問題なのではなく、症状を引き起こすきっかけ、つまり、苦しい気分を感じた出来事にしっかり目を向け、その解決をはかる、ということが治療になるのです。 以前にこのブログで『なぜふつうに食べられないのか 拒食と過食の文化人類学』を引用して摂食障害の治療を説明したことがありますが、『8つの秘訣』も同じスタンスで、否定的な気持ち全般に対処するための方法に拡大してしまった食べものと体重にまつわる否定的な気持ちをきちんと把握し、対処するスキルを身につけることが治療につながることを書いてあります。
大切なのは、何が起きているかではなくて、何かが起きたときにそれにどう対処するかということです。 回復するためには、心の奥にある思考や気持ちにもっと健康的な方法で対処できるようになる必要があります。 (中略) 気持ちに関しても、まずはありのままを認識し、しばしそのままにして、それからしっかり感じられるようになります。 『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店この『8つの秘訣』の取り組み方は対人関係療法と共通ですので、対人関係療法に取り組まれている方にも『8つの秘訣』はすごく参考になると思いますよ。 院長