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摂食障害の治療〜自閉症スペクトラム障害2

[2012.08.07]

ソバンスキー(Sobanski)らは、36名のアスペルガー障害のうち3名(8.3%)に神経性無食欲症(拒食症)様の食行動異常がみられたと報告しています。

ギルバーグ(Gillberg)らは、青年期発症の拒食症の患者51例の中で、アスペルガー障害や自閉症様状態を示すものは10例(19.6%)であったと報告し、ウェンツ(Wentz)らの報告では、平均27.4歳の摂食障害女性30名のうち、7名(23%)に自閉症スペクトラム障害(アスペルガー障害3名(10%)、特定不能の広汎性発達障害4名(13%))が認められています。

 

拒食症と自閉症スペクトラム障害との間に共通した精神障害や神経心理学的特徴がありそうですが、なかでも摂食障害の特徴を示す自閉症スペクトラム障害の特徴についてのまとめです。

この中で、自閉症スペクトラム障害の特徴として挙げられている「4.食事や体重への奇異なこだわり」「5.食事や体重以外への広範なこだわり」「7.自閉症スペクトラム障害としての特性」以外について、見ていきますね。

 

自閉症スペクトラム障害にみられる非特異的摂食障害は、「拒食は認めるが肥満恐怖はない」とか、「痩せと肥満恐怖は認めるが、やせ願望は認めない」など、知能検査において、動作性知能や知覚統合群指数の低下を示す一方で、明確なボディイメージの障害が認められないことが多いのです。

「自分は太っていると感じ、痩せたいと考えている」自己の身体に対する満足度の低さ(やせ願望の強さ)と、自尊感情(自尊心)には負の相関があると言われています。

これについて、小児神経科の泰斗である杉山登志郎先生は、思春期以降、こころの理論を獲得し、他者との関係がもてるようになると、自身のユニークな部分が周囲の人たちから「おかしい」という評価を受けていることに気づくため、どうしようもない不安を感じ、自己評価の深刻な危機に陥るといわれます。

また、定型発達の摂食障害患者は、いかに自分を受け入れてもらうかに腐心し、他者の気持ちを先取りしようとするのと対照的に、自閉症スペクトラム障害者は、他者の感情や立場に頓着せず、うまく周囲に合わせているように見える態度も、状況や相手の感情が読めないため受け身に徹しているのみで、自発性がなく、相互的な対人交流になっていないことも指摘されています。

 

精神病理的には、分裂機制や思い込みが強いため、些細なきっかけから、悪い自己が対象に投影され、被害的になりやすく、いったん思い込むと修正も困難と言われています。

 

以前より親からの自立をめぐる葛藤や母子関係は、摂食障害の原因の一つとして重視されてきました。

とくに自閉症スペクトラム障害者は、対人関係技能の未熟さゆえに母親と共生的になりやすく、相互に相手の不安を共有する関係になりやすいと言われています。
(対人関係療法でいう「境界線」や「敷地」の問題ですね)

母親にも自閉症スペクトラム障害の特性が強い場合、思い込みやこだわりが強く、先が読めない不安が生じやすく、親から子どもに対する両価性が高まり、瞬間瞬間に不満足で対象と結びつく部分対象関係や悪い部分を相手に投影する分裂機制による防衛が多用されやすい、と言われています。

このため、母親に自閉症スペクトラム障害の傾向がある場合、母子関係に焦点を当てすぎず、指導よりも支援が中心になりますよね。
この点については、次回、自閉症スペクトラム障害のある摂食障害の治療についてで触れたいと思います。

一方、母親の自閉症スペクトラム障害傾向が弱い場合、こだわりが強く融通がきかない我が子に手を焼いて疲れ果てている、というパターンがよく見受けられます。

 

ちなみに。
自閉症スペクトラム障害における摂食障害では、拒食症と過食症の比は9:4であり、過食症は少ないとされています。

話は変わって。
成人の注意欠陥多動性障害(ADHD)の薬として、日本イーライリリーの「ストラテラ」(一般名アトモキセチン)が承認されましたオッケー
秋ごろから使えるようになる見通しだそうです。

治療の幅も拡がってきますよね。

院長

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