摂食障害の治療〜自閉症スペクトラム障害3
『摂食障害と発達障害の治療〜その4』、発達障害の有無によらず、摂食障害の治療は自尊心の回復がポイントになることを書いていますよね。
今回は、自閉症スペクトラム障害における摂食障害の治療方針について概略を書いてみたいと思いますが、栄養状態の改善のための目標体重や食事量についての具体的な設定以外は、自閉症スペクトラム障害そのものの治療方針につながりますよね。
自閉症スペクトラム障害は、そのかたくなさや奇異さから、スキゾイドパーソナリティ障害や強迫性パーソナリティ障害とみなされるだけでなく、約7割が統合失調症と誤診されているとの言及もあるように、発達障害という視点がないと見落とされがちです。
太田らは、「症状や言動を心因論で理解しようとせず、客観的に認知、能力を査定する『聴き方』が治療者には必要」で背景は心理的問題ではなく、認知問題であると理解すると同じ症候をまったく異なる形で理解することが可能となる。と述べています。
そのためには、適切な診断が必要で、自閉症スペクトラム障害者が「自分が悪いわけではなく、脳の偏りが原因」と病名を受け入れられること、変わらないことと、変えるべきものの違いを根気強く説明する必要があり、まさに、ヘレン・ケラーとサリバン先生の関係を彷彿とするような養育関係のあり方が基本とされています。
自閉症スペクトラム障害者は、実行機能の障害を抱えているため、過去の体験が活かされずに同じことを繰り返し失敗体験や傷つき体験が多くなります。
自閉症スペクトラム障害者は、自身の感情を認識したり、物事の因果関係を理解することが難しいため、自閉症スペクトラム障害者が抱える対人関係のトラブルに対し、内省や洞察を目標とする治療ではなく、現実に起こっている事態を取り上げて、極端な考え方を自覚させ、相手を苛立たせない要求の伝え方と適応的な振る舞いなどの具体的な方法や行動を示し、繰り返し練習して定着させる社会機能訓練(SST)や生活機能訓練(LST)などの取り組みが必要となります。
水島広子先生がツィッターに書いておられたように
人の話を聴くことで自分の心の平和につながる、というスタイルのAHでは、コミュニケーションに独特のパターンを持った発達障害の方(非定型発達者)には十分に味わっていただけないということを感じてきた。新たなスタイルの模索中。
一つの考えは、言葉を使わずに「現在」にいる活動を共にすること。 食、農作業など。また、私は身近な非定型発達者と、マインドのレベルではあまりにもずれてしまい共感どころではないが、その一段深いところではつながりを 感じることができる。この「つながり」が何であるかをもう少し考えたい。
木更津で里山再生に取り組んでいる旧知の知人のところを訪ねた。単に自然が好きだが、言葉を使わない「AH的安全な共存」について考えていて(非定型発達の方とは言葉を使った共有はかなり難しいので)、その一つのヒントが、自然の中で時間を共有するというもの。
という言語を介した感情表出の困難という特性があるため、自閉症スペクトラム障害に併存する精神症状の治療は、合理性が受け入れ訳す、几帳面な実行により効果が上がりやすい認知行動療法や行動療法が基本となります。
しかしながら、治療の枠組みが強迫性を刺激し、治療が滞ることもあることが指摘されています。
認知の問題があることを前提とし、強迫性や情動性を刺激せず、能力に見合った適応を目指していく柔らかな枠組みも提唱されています。
アスペルガー症候群の簡単な説明(?)については、ここをご覧くださいね。
院長