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職場の対人関係の問題と「適応障害」とリワーク

[2022.08.03]

適応障害(適応反応症)」は、日常的な出来事、あるいは、必ずしも「圧倒される」ような質とは限らない「日常のストレス因」に対する「順応期」に、抑うつ・不安症状、行為面の障害などの「不適応反応」が生じる状態、と考えられています。

 

特に地位の変化、死別、身体疾患罹患など「対人関係を障害するもの」が「適応障害」の誘因となることが多いようです。

 

しかし、「適応障害」と診断されて休職中の人たちは、「仕事が多忙で、次第に眠れなくなり、だんだん気持ちが辛くなった」とおっしゃることが多いですよね。

 

「適応障害」の引き金になる仕事の忙しさと、対人関係はどのような関係にあるのでしょうか?

 

例えば、業務上出来事のうち負荷強度IIとされるものの中には、以下のようなものが挙げられています。(『心理的負荷による精神障害の認定基準』)

 

8.達成困難なノルマが課せられた

9.ノルマが達成できなかった

10.新規事業の担当になった、会社の建て直しの担当になった

16.1ヶ月に80時間以上の時間外労働を行った

17.2週間以上にわたって連続勤務を行った

21.配置転換があった

23.複数名で担当していた業務を1人で担当することになった

 

このリストを読むと、あるあると感じた人も多いのではないでしょうか?

 

これらは上司・上長を含む会社からの業務命令なので、断ることは難しいですよね。

 

 

労働者の心の健康の保持増進のための指針』の「4つのケア」に、「セルフケア」と「ラインによるケア」が挙げられています。

 

「セルフケア」とは、従業員自身がストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解をもち。ストレスチェックなどを活用したストレスへの気付きを促し、ストレスへの対処法を身に付けていくことです。

 

一方「ラインによるケア」とは、管理監督者(上司や上長)が、職場環境等の把握と改善、労働者からの相談対応などを行うことです。

つまり、管理監督者(上司や上長)は、職場環境等の改善を通じてストレス因を軽減させ、部下のメンタルヘルス不調の未然防止、部下のメンタルヘルス不調への気付きと対応などを行うのです。

 

「適応障害」などのメンタルヘルス不調を未然に防ぐには、労働者によるセルフチェックやセルフケアと、自発的な相談および管理監督者(上司や上長)等による相談応答(ラインによるケア)が必要なのです。

 

しかし、従業員(部下)の「セルフケア」と、管理監督者(上司や上長)の「ラインによるケア」が協調して機能しなかった場合、つまり、上司と部下の間での相談という対人関係の欠如と、過重労働・長時間労働は密接に関連しています。

ですから、過重労働や長時間労働という職務上の負荷による「適応障害」の発症は、ある意味、対人関係の問題ということもできるのです。

 

「適応障害」は、ストレス因が始まると速やかに発症し(DSM-5では3ヵ月以内、ICD-10では1ヵ月以内)、ストレス因がなくなれば速やか(DSM-5、ICD-10ともに6ヵ月以内)に軽快します。

 

多くのメンタルクリニックでは、「適応障害」と診断されると、ストレス因から離れることを主眼に休職の診断書が提出されます。

 

しかしながら、『適応障害とは何だろうか?』でも書いたように、「適応障害」の診断で半年以上、休職されている人も少なくありません。

適応障害とは何だろうか?

 

「適応障害」とまぎらわしい疾患』で説明したように、《出来事(ストレス因)をどう捉え(認知的)、どんな気持ちになり(情緒的)、そして、どのように対処したか(行動的)が、状況因に対する適応的なコーピングとなったのか、あるいは逆に、不適応反応を強化したのかによって、「適応障害(適応反応症)」の発症とその持続につながって》います。

そのため、《ストレス反応が持続してしまう個体側の要因を考慮する必要がある》のです。

「適応障害」とまぎらわしい疾患

 

「適応障害」が遷延化してしまう「個体側の要因」としては、上に挙げた「セルフケア」の不足が考えられます。

具体的には、ストレス因とストレス反応への気付きの不足、ストレス因への対処法(コーピング)とストレス反応へのセルフケアの問題と理解することができます。

 

つまり、「自己概念あるいはスキーマ(関係のなかにおける役割モデル)についての気づき」に困難を抱えた状態、言い換えると、対人関係の障害を中心に自分自身との関係(自己認識)、思考や感情、行動のコントロール不全がある状態と考えることができます。

 

このような特徴を『適応障害と発達障害特性』や『発達障害特性を有する適応障害への対応』で解説しましたので、参考にしてみてください。

適応障害と発達障害特性

発達障害特性を有する適応障害への対応

 

こころの健康クリニック芝大門の職場復帰を目指すためのリワークでは、このような人たちに対して、①自分自身との関係を改善する(セルフモニタリング)②行動の仕方を変えていく(コーピングスキル)③他人との関係を改善する(社会認知と対人関係のトレーニング)、の3つをテーマにした心理社会的治療をおこなっているのです。

 

適応障害の診断で休職中の方は、ぜひ、参考にしてみてくださいね。

精神心理療法に特化したリワークプログラム

リワークプログラムでの精神心理療法の実際〜復職可能になるまで

院長

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