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痩せれば解決する

[2021.02.05]

今月からは患者さんからよく伺う言葉や訴えを取り上げ、アニータさんの「摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語」を引用しながら考えていきたいと思います。

 

「痩せれば自信がつく」「以前の体重に戻れば勉強にも集中して取り組める」というように、痩せればその人が抱える悩みがすべて解決するかのように感じている患者さんは少なくありません。

 

アニータさんは著書の中でこんな風におっしゃっていますよね。

 

(前略)食べ物や痩せることへの執着は、人生での新たな焦点になりました。心の奥に潜む痛みや恐怖に苦しむより、カロリーを数えたり、一キロの体重のことで頭を抱えて悩んだりする方がましでした。体での苦しみを激しくするほど、人と違うことや他人の見えない物事が見えること、そして居場所がないことで感じた孤独感が遠のいていったのです。

 食べ物や太ることでの悩みもとても辛いものでしたが、人生で抱えている他の悩みに比べたらましで、単純な解決策があるように思われました。ダイエットをし続ければ全部解決すると信じていたのです。

アニータ・ジョンストン著 「摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語」より

 

確かに私自身もダイエットを始めた当初は、思うように体重が減ることで自信がついたように感じましたし、勉強にも意欲が湧いて成績を下げることもありませんでした。何もかもがうまくいっているような感覚でした。

 

けれども、私の場合それは長くは続きませんでした。食べて体重が増えることの恐怖や何をどのくらい食べればよいのかという不安が襲ってきたのです。

学校の帰り道、「私はこの先いつまでこの恐怖と不安を抱えて生きていくのだろう。」と、出口の見えない迷路に迷い込んでしまったような気持ちで歩いていたことを覚えています。学校から帰ると心も身体もくたくたで、そのまま寝てしまうことも増えました。

 

家では食事のたびに「なぜ食べないんだ、しっかり食べなさい。食べないから寝てばかりいるんだと。」と叱られ、自分でもどうしたらよいのか分からずますますつらい状況に追い込まれてしまったように感じました。けれども、アニータさんはこうおっしゃっていますよね。

 

乱れた食行動や摂食障害の場合、食べ物との葛藤は、単に私たちが本当に苦しんでいる物事の鏡像でしかないのです。ですから、食べ物自体が問題ではないと正しく理解しなければなりません。

もし食べ物や痩せること、そしてダイエットに執着しているなら、食べ物に関する行動は、人生で本当に苦しんでいることから気をそらすためのものなのです。

 

例えば、

もし拒食をすれば、あなたは食べ物のことばかり考えます。過食嘔吐をすれば、空いた時間は過食の計画を立て、隠れて吐ける時間と場所を探すことに費やされます。無茶食いをするなら、ひたすら食べ物、食べ物に集中します。すると不思議なことに、家、学校、職場、人間関係での問題が消え失せてしまうような感じがします。

 

私もまさにそうでした。けれども今振り返ると、私は食べることを拒絶することで、家族や友人、先生といった周囲の人たち、そして何より自分自身を拒絶していたのかもしれません。

自分の感情を否定し、それらを閉じ込めることで本当の問題から目を逸らし、「痩せること」に問題をすり替えたのかもしれません。

 

今日は最後に、アニータさんのこの言葉をみなさんへのエールとして送りたいと思います。

 

乱れた食行動から解放されるという夢を追うと決めたなら、星を触りたいと願うだけではどうにもなりません。前に進み、正しい道を歩き、痩せれば幸せになれるという錯覚に惑わされず、また、ダイエットを続ける十分な意志があればいいんだ、カロリー計算が解決策だ、食べ物が問題なのだという信念にも惑わされないという、強い決心と覚悟が必要なのです。

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