非定型の摂食障害〜選択的摂食
『男性の「摂食障害」』で男性では女性と異なり、脂肪よりも筋肉が緩んで締まりがないことを気にする傾向があり、体重よりも体型にこだわることが多いため、体重を減らすことよりも、脂肪を減らして筋肉質になろうとする場合が多いことについて触れました。
男性に限らず女性でも、体形や筋肉質にこだわる特性を持った人は、摂食障害の患者さんのように太っている状態を「自信がない」と感じるのではなくむしろ不健康と考え、健康志向が高いことも特徴です。
その際に、非常に限られた範囲の食物嗜好(決まったものしか食べられない)と、新しい食品を摂取しようとしないということが起きてきて「摂食障害」ではないかと思い、対人関係療法による治療を希望され三田こころの健康クリニックを受診されるケースもあります。
このようなケースは拒食症や過食症など、摂食障害特有の「体重や体型への病的な没頭」は多少みられるもののボディーイメージの認知の歪みはなく、低体重とは限らず、正常体重や体重過多(筋肉質)もあります。
『非定型の摂食障害〜回避/制限性食物摂取障害』でふれた「回避/制限性食物摂取障害」とまでは言えないため、グレート・オーモンド・ストリート・クライテリア(GOSC)の「選択的摂食」と診断することが多いのですが、このタイプの食行動異常は摂食の問題での受診者のうち約14%に見られ、男女比は4:1で男性に多いといわれています。
「選択的摂食」の発症は、拒食症と同じように、健康診断を受けたことや、ダイエット、受験や引っ越しなど環境の変化をきっかけに発症することもありますが、発症契機が不明なものも多いようです。
この「選択的摂食」の典型例では、5〜6種類の限られた食品しか口にしない一方、パンやポテトチップス、ビスケットなどの炭水化物でできたものを好むことが多いのです。
さらに「選択的摂食」では、特定のブランドや、特定の店の食品、決まった調理法でなければ食べないこともあるのが特徴ですし、またダラダラ食いや、同じ食べ物ばかりを食べてしまうのを自分で制限しようとすると、気持ちが落ち込んだりイライラしたりするので、「過食症/むちゃ食い症」ではないかと思い、治療を求めて受診されるケースもあります。
「選択的摂食」の全例が、乳児期に母乳や断乳、離乳食がうまく進まないとか、偏食があったと報告されていますが、幼児期には好き嫌いとして健常児にもみられるものの、ほとんどが成長とともに消失することが知られています。
一方「選択的摂食」の食行動異常は食べ物へのこだわりであり、感覚過敏(光過敏、音過敏、匂い過敏)などを伴うことも多く、「自閉症スペクトラム症(広汎性発達障害やアスペルガー症候群)」など、強迫性障害を併発するケースでよくみられることがわかっています。
とくに幼少期に自閉症スペクトラム症の診断を受けず、思春期・青年期、あるいは成人してからはじめて診断されるような比較的、不適応をおこしてないケースが多いのですが、社会的な活動範囲が広がることで、集団との適応不全という問題として顕在化することもあり、「選択的摂食」の状態になってからさまざまな状況への不適応が広がっていくこともあります。
多くの医療機関で「拒食症(あるいは類縁疾患)」には、「食べなさい」という強要しか行われないため、治療によって傷つくということも起きていますよね。
「選択的摂食」の治療は患者のペースの合わせて強制せず、一つの食物を少量食べることから始め、報酬を与えるなどオペラント条件づけの要領で少しずつ食べられる種類と量を増やしていく行動療法的な対処を行うことがメインになるようです。
しかし、診断は難しいので、三田こころの健康クリニックに相談してみてくださいね。
院長