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過食衝動とマインドフルネス

[2016.01.04]

過食症の対人関係療法による治療が進んで、過食につながった出来事に対処できる力がついてくると、とくに出来事が起きないのに過食したくなることがあります。

過食症の症状がひどかったときは、些細な出来事でも心が動き、心の状態を把握できないためにモヤモヤと感じ過食につながりますが、対人関係療法による治療が進んでくると、出来事とは関係なく気持ちを抱えられないために過食で紛らわしていることがわかってくるのです。

 

ある患者さんは、過食しようかどうしようか迷って、冷蔵庫の前で悩んでいたら、それが過食のスイッチになったとおっしゃっていました。

このようなときに必要になるのが、過食衝動との向き合い方ですよね。

食べたいのか食べたくないのか、過食したいのか嘔吐したいのかにかかわらず、衝動というものはなかなかコントロールできるものではありません。
しかし、ひとまずすぐさま反応しないでいられると、衝動からは多くを学ぶことができます。
衝動があっても反応しないでいる状態を「衝動の波に乗る」と呼ぶ場合がありますが、これは基本的に、反応する前にしばらく気持ちをありのままに感じつつ、何もしないで時間を稼ぐということです。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

 

「衝動の波に乗る」という状態を超えるには、別のことをして気を紛らわす「気そらし」ではなく、注意深く衝動を見守る「心の耐性」が必要になります。

 

マインドフルネスの脳科学』で書いたように、衝動は「デフォルトモードネットワーク」が活性化した状態ですから、その状態に気づく「顕現性ネットワーク」を活性化し、「中央実行モード(あぁ、あれね!)」へ移行し、「症状に力を与えない」ため衝動を客観視する必要があります。

 

思考というものは、今までに周囲から学んだり、自分の中から沸き上がったりしてきた概念や信念に基づいていますが、そうした思考には、間違った情報を含んで私たちを誤った方向へ導きかねないものがたくさんあります。
(中略)
最初に頭に浮かぶ思考は必ずしも変えられるとはかぎりませんが、それに引き続いて起こされる思考なら、コントロールできるようになるのです。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

ここでいう「最初に浮かぶ思考」は、「何が起きたのか?」の状況認知のことですが、経験による誤った意味づけ(フィルタリング)が関わっています。

 

アティテューディナル・ヒーリング(AH)でも

私たちの気分を悪くするのは、他人や出来事そのものではない。
それに対する自分のとらえ方である。
とらえ方を決めるのは、自分のこころの姿勢である。

と言いますが、外的な出来事とそれに対する自分のとらえ方(表象)を区別し、決めつけをしている状態に気づくことを「こころの姿勢」と呼んでいるようです。

 

『8つの秘訣』の著者であるキャロリン・コンスティンさんは、「必ずしも変えられるとはかぎりません」と書いています。
たしかに過食症では前頭前野眼窩面の機能低下がありますから、マインドレスな「デフォルトモード」が優勢なのも無理もないことです。

 

しかしそれに反応して起こる「脳内劇場(思考)」に対しては、気づき、巻き込まれずに距離をおいて見るマインドフルネスで、背内側前頭前野が関与する「中央実行モード」に切り替えることが頭の中で繰り広げられる「摂食障害のおしゃべり」の向き合い方です。

 

「中央実行モード」を使って「何が起きたのか?」「その時どう感じて、本当はどうなって欲しかったか?」そして「そのためにはどうしたらいいか?」を主体的に考え、「中央実行モード」で行動に移せるようになることが「コントロール感(自己効力感)」の回復につながります。
これが「感情や気持ちを理性あるいは思考と統合する」ことです。

 

本来、私たちの気持ちとは、何か注目する必要があることが自分の中で起きているときに注意を喚起してくれる役割を果たしています。また、進むべき方向を判断するための重要な情報も伝えてくれます。
(中略)
有効な問題解決と健康的な意思決定をするためには、感情に気づいて、それを感じてから、さらにそうした感情や気持ちを理性あるいは思考と統合する必要があるということです。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

「感情に気づいて、それを感じ」る「顕現性モード」で、一次感情と二次感情を区別することが必要になります。
これが瞬間瞬間に気づきつつ客観視するマインドフルネスです。
このことは『自分の心と向き合う習慣』で書きましたので、参照してみてくださいね。

院長

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