自分と向き合うことで力を取り戻す
『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』で、「人間関係での調和を大切にするというのは、女性らしさの最も素晴らしい特徴のひとつです。しかし、ときにはそれを重視しすぎてしまうことがあります」と、対人関係の調和を重視しすぎることで自分自身を犠牲にする可能性についても注意を促されています。
他者への過度の依存や協調性の高さは、自己受容を弱めてしまい、愛着が不安定なバランスになってしまうのです。
自己批判や自己犠牲が、求めている親密さや支援を逆に弱めてしまい、「求不得苦(求めるものが得られない苦しみ)」を招いてしまうということですよね。(『自動操縦状態から抜け出す』参照)
持ち上がってくるものは、ずっと懸念されている古くからの問題、ことによると持続的な恐怖、嗜癖、痛み、あるいは病気であるかもしれない。ある人に対する気持ち、あるいは反応かもしれない。あなたが悩まされている誰か、あなたが葛藤状態にある誰か、あるいはあなたを怖がらせる誰かかもしれない(現実の人物に焦点を当てるよりも、その人に関連してあなたの中に湧き起こる感覚に取りかかるほうがよい)。
ワークでは恋人や誰かとの間で起こった葛藤について考えるかもしれない。それは怖れ、執着、あるいは混乱のデーモンになるかもしれない。人間関係はしばしば私たちのデーモンにとって最大の引き金になるのである。アリオーネ『内なるデーモンを育む』星和書店
「現実の人物に焦点を当てるよりも、その人に関連してあなたの中に湧き起こる感覚に取りかかるほうがよい」ということは、『愛着とセルフ・コンパッション』で引用した「当然のことながら、自分に関する感じ方を変える上ですべてを他者に頼ることには問題がある。(中略)幸い、自己に対する見方を変えるために他者に頼る必要はない」ということですよね。
『素敵な物語』にあるように、「自分自身との関係と、他人との関係のバランスを保てるようになる」には、「人間関係に個性や自主性といった男性的な側面を取り入れ」なければならず、これは「力」に関することでもあるのです。また「自分自身との関係(自己志向)」と「他人との関係(協調性)」のバランスを取っていくことは、獲得安定型の愛着の土台にもなるからなのです。
乱れた食行動の原因は必ずしも自分の無力さではないと理解することがとても大切です。
無力さではなく、むしろ、力への恐れが原因なのです。
たとえば、感情(特に怒り)に潜んでいる力、ものごとの見方が持つ力(特に、自分の見方が他人の見方と違ったとき)、知能や才能の持つ力(他人が嫉妬するとき)、セクシュアリティの持つ力(誰かに言い寄られたとき、どう対処してよいかわからない)の恐れなどです。
そして、女性であること自体が持つ力への恐れもそうです。ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
過食やむちゃ食いは、本に書かれていたり一般の人が考えているように、ストレスを表したものや、怒りや罪悪感そのものによって引き起こされるのではないのです。
過食やむちゃ食いは、不安に対する不安と同じように、「自分自身の心の動き(力)への恐れ」、つまり「心の中で気持ち(力)を抱えておけないこと(感情不耐)」が原因ということですよね。
怖れ、強迫、あるいは嗜癖といったものはすべて、私たち自身の一部分であるのだが、それらが分離され、自分ではないものとされ、さらには対抗して戦う対象となることによってデーモン化してゆく。
私たちが自分のデーモンから逃げようとすれば、彼らは私たちを追いかけてくる。
形をもたない勢力である彼らと戦うことによって、私たちは彼らに力を与え、そうして彼らに完膚無きまでに負かされてしまうだろう。アリオーネ『内なるデーモンを育む』星和書店
「力に対する恐れ」は、自分自身の心の一部を自分から切り離し、外界(摂食障害の場合は食べ物)や他者に投影することで、他人や出来事が私たちの気分を悪くしていると認識することにつながります。
ですから、現実の他者との関係に取り組む前に、自分自身と向き合い、自分自身の心との関係を改善する必要があるのです。
外的な力の知覚的な枠組みから内面的な力へと一歩踏み出せれば、今までとまったく違った力との関係が築け、世界での新しいあり方を経験することができます。
他人の力を減少させずに自分の内面の力を出すことが可能であると理解しはじめると、人間関係を築くと同時に自分の力を持ち続けられるということがより気楽にできるようになるのです。
自分の感情が持つ力を感じながら、他人を攻撃したり抑えつけたりせずに、それを正直に直接的に表現できるようになります。ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
『素敵な物語』では、内面的な力へと一歩踏み出す方法として、繰り返し「自分自身と向き合うこと」を勧めていますよね。
自分自身と向き合い、自己内対話(対話型・思考記録)への取り組みを通して、「自分の力を持ち続け」ることができるようになることが必要だということです。
これにより、「過食症」や「むちゃ食い症」、「気分変調症」や「不安障害」、あるいは「不安定型愛着スタイル(いわゆる愛着障害)」の対人関係療法による治療で、自分を偽らずに「正直に直接的に表現できるようになる」ための必須プロセスということですよね。
※7月に開催する「8つの秘訣グループ治療」では、「自分を偽らずに正直に直接表現できるようになることに取り組みます。
「8つの秘訣グループ治療」の申込み締めきりは、6月23日(金)18時です。
こちら(→「http://wp.me/P8s70U-BK」)をご覧になり、早めにお申し込みください。
院長