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摂食障害や気分変調症の「病気の3つの策略」

[2020.04.13]

外出自粛要請や緊急事態宣言の発出によって、自宅で過ごす時間が増えると、何もすることがなくて、あれこれと考えてしまう時間も増えてしまいますよね。

 

こころの健康クリニックでは、摂食障害や気分変調症の対人関係療法の導入の一番最初に、「病気の3つの策略」として、① 自分を責める② 人と比べる③ なぜ?どうして?と原因探しをする、を教えていますよね。

そして、病気の策略に気づき、それに従わないようにと説明していますよね。

 

一見、解決に導いてくれそうな原因探しが、病気の策略と考えられるのはどうしてなのか、みなさんは理解できますか?

 

原因追求によって誘発された会話が多くの場合、一見何らかの解決に導いてくれるかのようでありながら、実は他者を責める、ひいては自分を責めるという袋小路に向かわせている、とみることもできると指摘したいのだ。

このような袋小路にたどり着いてしまった経験は、誰にでもあるのではないだろうか。

国重浩一. 「あたりまえ」の再考 こころの科学209: 10-15, 2020

 

こころの健康クリニックでは、「なぜ?」「どうして?」の疑問形が「責める」ニュアンスを含んでいるから、と説明していますよね。

原因探しは無限遡及に陥ってしまうため、その袋小路から抜け出すために自分を含めた誰かに責めを負わせることで、さらに袋小路にはまり込んでしまうということですね。

  

さて、今日のテーマは病気の3つの策略のうちの1つ、「人と比べる」です。

ジェニーさんも、まんまと摂食障害思考(エド)の策略に陥ってしまったようです。

 

エドはどうもフェイスブックのアカウントも持っているみたいで、それを使っていろいろと比べることも大好きです。

だから、ネットを使っているときにも、できるだけ「比べてみても、惨めなだけ」を思い出しましょう。

そうそう、自分が嫌な気分になる人や宣伝をブロックしておくのも忘れないでください。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

フェイスブックやインスタグラム、ツイッターなどのSNSを見て、他の人が自分より輝いて幸せそうだなと感じたことは、誰しも経験があることだと思います。

また海外の論文では、ソーシャルメディアのアカウントを持っている人は摂食障害の病理が重いとも報告されています。

 

ジェニーさんは相手をブロックしてしまっていますが、その前に、自分がSNSを見る行動を「選択」した背景にある自分の心理(考え・感情・欲求・願望・信念)を自覚することが先決ですよね。

 

SNSを見て、嫌な気分になりたかったのでしょうか?それとも誰かを祝福したかったのでしょうか?、あるいは、そんなことなど省みもせず、いつもの慣れ親しんだクセでただ見てしまったのでしょうか?

 

自覚があったかなかったかにかかわらず、SNSを見る行動を「選択」したのですから、その結果(相手が羨ましくて自分が惨めに思えてイヤな気分になった)は自分で引き受けざるを得ませんよね。

 

自分の外見のこととなると、私には正しく見えていないのだということは自分でもよくわかっています。私の視野は、文字通り歪んでいるのです。

だから、自分を他の人と較べてもがっかりするだけで、良いことは何もないのです。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

ジェニーさんは、無自覚にSNSを見てしまったことと、摂食障害の思考フィルターによって、自分に都合の悪い結論を導いてしまったことを自覚されています。

 

摂食障害(病気)の部分の考え方のパターンを知る』で摂食障害の思考フィルターを「摂食脳」と呼ぶことを紹介したことがありますよね。

 

摂食脳は、なにも体重減少にかかわることばかりではない。社会的な場面でも、特有の摂食脳が顔を出してくる。

自分についての評価を気にして周囲の人に気を遣いすぎるし、少しアドバイスを受けただけでひどく傷ついてしまう。

自分の考えや好みを人に伝えてはいけないと思って、何でもほかの人に合わせようとする。一見作業能力は高いのだが、じつは200%、300%の力を使っているので、疲れやすく長続きしない。

自分を押し殺して人に合わせるぶん、それだけいっそう自分を主張したい気持ちも強くなり、それが病気のさまざまなこだわりとして現れる。

そうするうちに人とかかわることじたいがつらくなって引きこもってしまい、場合によっては死すらも考えるようになるのである。特有の“ディソレクシック(摂食症的)”な社会行動パターンである。

このパターンが、なかなか治らない。

摂食症の症状が治まっても、この特有の行動パターンが持続してしまうために、社会適応がもうひとつ上手くいかないことが多い。

野間俊一. 摂食症(ディソレクシア)という病——“うまく食べられない”生き方. こころの科学209: 15-30, 2020

 

摂食障害の思考フィルター(摂食脳)は、「ネガティブな自己評価」だけでなく、二者関係や集団との関係の中でも「他者評価を気にする」という形で表れてきますよね。 (『摂食障害と気分変調症のセルフモニタリング』参照)

 

そうなると、いよいよ摂食障害症状の出番です。

 

数時間後、私はこうしてここに座って、どうして人生のこの問題をエドにコントロールさせてしまったのだろう、と後悔しながら考えています。いいえ、この問題に限ったことではありません。こうした領域に関するどんな問いについても、エドに決定権を委ねるべきではないのです。

「さっきエドに与えてしまった力を取り戻すために、今、この瞬間に私ができる正しい行動とは何だろう」と私は考え続けています。

エドは、決定が下されてすべてが済んだと思っているけれど、私は自分に問いかけ直して、自分のためにどうしたいのかをまだ決められるのです。

シェーファー、ルートレッジ『私はこうして摂食障害(拒食・過食)から回復した』星和書店

 

ジェニーさんは「どうして?」と後悔しながら自分を責めていました。

そして、「さっきエドに与えてしまった力を取り戻すために、今、この瞬間に私ができる正しい行動とは何だろう」と考えとの向き合い方が変わったことに気づきましたか?

それからジェニーさんは「どうしたら(How?)」ではなく「何をしたら(What?)」を使って「行動の仕方を変えていく」ことに取り組まれました。

 

みなさんも、対人関係療法の面接で習った言い回しを思い出して、言い換えを使ってみてくださいね。

 

院長

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