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摂食障害の愛着(アタッチメント)スタイルと気質

[2013.09.30]

アタッチメント(愛着)は、特定の対象に対する情緒的結びつきで、年齢とともに発達・分化、内在化し、「内的作業モデル」として存在し続け、青年期や成人期では愛着スタイルとして対人関係に影響を及ぼすということが知られています。

子どもの母親へのアタッチメントは

(1) 人に関心を示すが、人を区別した行動はみられない段階
(2) 母親に対する分化した反応がみられるが、母親の不在に対して泣くというような行動はまだみられない段階
(3) 明らかにアタッチメントが形成され、愛着行動がきわめて活発な段階
(4) アタッチメント対象との身体的接近を必ずしも必要としなくなる段階

の4段階を経て発達することが知られていますし、養育者だけでなく他の対象へもアタッチメントは広がります。

 

しかし逆に、不適切なアタッチメントを形成した子どもは、成長するにつれ不適応などの病理を有することが多いことも知られています。

摂食障害の場合は、愛着軽視型(拒絶/回避型)ととらわれ型(不安/アンビバレント型)が関係する
と言われており、このような不安定型の愛着スタイルは、過去に過食や嘔吐などの何らかの摂食障害傾向がみられた健常群でも愛着は不安定になると言われます。

また一方では、不安定な愛着が摂食障害の原因なのか、摂食障害が愛着の安定さに影響を及ぼすのかは明らかではないが、不安定な愛着スタイルを持つ10代の女性が食と体重にかなりの興味を示すと報告されており、やはり不安定型の愛着スタイルと摂食障害は何らかの関係をもつようですし、症状が消失しても不安定型の愛着スタイルは持続するようです。

 

摂食障害の精神病理を考えると、摂食障害者は食べものを調節しやせることで、自分の身体をコントロ-ルして万能感に浸り、過食・嘔吐して嫌なことを忘れるというファンタジ-の世界に退避していると考えられます。

この場合、「体重や体型およびそのコントロール」あるいは「(過食する)食べもの」や「過食や自己誘発嘔吐」という行為が愛着対象となり、その歪んだアタッチメントの世界への退避は「人格(パーソナリティ)」の土台である「気質(テンペラメント)」と環境要因との相互作用である「性質(キャラクター)」と関連すると言われています。

 

水島広子先生の『拒食症・過食症を対人関係療法でなおす』にもクロニンジャーの気質と摂食障害の関係は触れてありますし、『摂食障害と性格特徴』でも書いたように摂食障害では自己指向性(自尊心)と協調性(人当たりの良さ)が低下しているという特徴が見られます。

 

摂食障害のタイプ別に見てみると

のようになります。

 

つまり、クロニンジャーの気質要因は摂食障害のタイプによって対応する精神病理が微妙に異なりますし、「損害回避」因子はセロトニンや不安・悲観と関連しており、これが「おそれ型」「とらわれ型」の
愛着スタイルの形成に関連していると言われます。

しかし、不安定な母子関係を乳幼児期に体験した者であっても、支持的で親密な人間関係や情緒的経験をすることによって、安定した人間関係を結べるようになることも知られています。

 

対人関係療法では治療者の態度として患者の代弁者としての温かさを保ち、全体として、評価を下さない、無条件の肯定的関心を注ぐということを言われます。
これがアタッチメント形成の土台となり、現実の延長上にある面接室という治療の場で治療者を安全基地として

探査(探究的技法、コミュニケーション分析、感情の励ましなど)
決定分析(ブレインストーミング)
ロールプレイ(実際の練習)

を行うことで、現実の生活の場での探索活動を行い、治療者が内在化する(デタッチメント)ことによって安定した人間関係が築けるようになるというプロセスが対人関係療法の進め方ですよね。

院長

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