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感情を感じてみるということ

[2017.05.22]

古典的なメランコリー型のうつ病の治療では、休養と服薬が原則であり、励ましてはいけないという激励禁忌神話が長く信じられてきました。(『激励禁忌神話の終焉』参照)

しかし「苦痛な体験に続いて認められ、この体験に不相応な抑うつ状態(反応性抑うつ)」に対しては、むしろ休養(休職)せずに現実的な不安を感じながら、気分にかかわらず行動できるようになることが必要です。

 

感情と行動を区別することは、とても大切です。行動はコントロールできますが、感情はできません。それぞれ別の命があるのです。感情をコントロールしようというのは、山を泳いで登っていくのと同じくらい不可能なことです。
行動と違って、感情はあなたや他の人を傷つけません。抱いていることが不快だったり、居心地の悪いものだったり、(正しく表現されないと)暴力的な行動の原動力になったりすることはありますが、感情自体は悪いものでも、破壊的なものでもありません。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

行動はコントロールできるといっても、拒食や過食などの摂食障害行動を我慢するということではありません。あるいは、過食を押さえつけるのは良くないので、食べ続ければよいということでもありません。

そうではなくて、過食の引き金になっている感じないようにしている感情を認め、感情に身体の中に居場所を与えてあげることから回復への道のりが始まります。

感情を自覚する力をつけ、心の中で何が起きているかをわかるようになることは、三田こころの健康クリニック新宿で行っている対人関係療法では「自分との関係を改善する(心の状態の変化についての気づき)」と説明していますよね。

 

乱れた食行動から解放されるために感情との関係を変えたいと思っている人は、まず最初に、感情を自覚する力をつけ、今、心がどういう状態にあるのかを感じられるようにならなければなりません。
今までと違う感覚を経験していることや、体のどこでそれを感じているのかに気を配る必要があります。そうすることで、さまざまな感情をひとつひとつ区別できるようになるのです。

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

摂食障害からの回復は、自分の心の中で起きている「健康な部分」と「摂食障害の部分」の闘いに気づき、闘いを終わらせ、自己内調和をもたらすだけでは足りないのです。

最終的には「健康な部分」と「摂食障害の部分」が統合・融合し、「一つ(ホールネス)の自分」と感じられるようになる必要があります。これが三田こころの健康クリニック新宿で強調している「自己志向」の中の「自己受容」ということですよね。

 

そのための最初のステップが、「感情をしっかり感じてみる」ということです。思考とちがって、感情は身体感覚として感じられます。
感情を概念的に捉えることは、感情を引き起こす「良い/悪い」のジャッジメントを助長します。そのような概念的に表現された感情は感情的な思考であって、身体が感じる感情ではないのです。

 

感情をごちゃまぜにして、「悪い」「悩んでいる」「大丈夫」などという曖昧な言葉で説明するのではなく、より正確で明確な言葉で説明できるようにならなければなりません。たとえば、怒りという感情が、どのように失望や疲れ、いらだちとは異なる感覚をもたらすのか、といったことにきちんと気づけるようにならなければなりません。これを、それぞれの感情がもたらすさまざまな体の感覚を明確に感じ取れるようになるまで続けるのです。
(中略)
そして最後に、明確で直接的な方法で感情を表現しなければなりません。
(中略)
何が言いたいのかというと、すべての感情に同じ接し方をする(悲しい?じゃあ食べよう。怒ってる?じゃあ食べよう。寂しい?じゃあ食べよう)のではなく、感情それぞれに合った対応をしなければならないということです。 

ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店

 

「曖昧な言葉」での表現、たとえば罪悪感とか不安とか、パニックとかキレるとか、自分なりの理解の枠組みでの抽象的な表現は、感情ではなく思考(概念化された感情)なのです。そのため同じ言葉を使っていても、相手が同じ意味づけで受け取るとは限りませんよね。

身体的な感情を「直接的な方法で表現」することは、たとえば「モヤモヤした気持ち」と表現するのではなく、胸のこのあたりにこのくらいの大きさで、フワフワと柔らかくてちょっと冷たく感じる灰色のモヤみたいなのがあって、大きくなったり小さくなったり脈打っているみたいで、大きくなったときにはピンクっぽく変化する、のように具体的に感じてみる必要があります。

このプロセスが、摂食障害からの回復の最終段階で、「健康な部分」と「病気の部分」を統合する時にも必要になりますから、しっかりと練習しておいてくださいね。

 

院長

 

※平成29年5月23日(火)10時から【8つの秘訣グループ療法】の申込み受付を開始します。
是非この貴重な機会に【8つの秘訣グループ】に参加され、摂食障害からの回復の道のりを歩き始めてください。

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