愛着障害と対人関係の障害
もう一つのブログである『如実知自心』で『愛着障害』を取り上げて以来反応性愛着障害の検索数がすごく多いです。
『愛着障害とは何か?』に書いたように愛着障害とは対人関係における「奇妙な拒絶」もしくは「無分別」という行動や行為の障害とみなすことができそうです。
その原因が、虐待やネグレクト(情緒的・身体的欲求の無視)、あるいは養育者(愛着対象の変遷)を誘因とする二者関係の中での相互作用を通して形成され、それが関係性の心的表象を形成したものと言えますよね。
この関係性の4つのパターンについては『反応性愛着障害・脱抑制性社交障害』を参照してくださいね。
愛着障害では、養育環境との相互作用以前に個体に存在していた(現在も存在している)何らかの問題、
つまり自閉症スペクトラム障害など児側の「発達の問題によらない」と除外規定があります。
つまり個体と養育環境との相互作用に存在していた(幼小児であれば、現在も存在している)「関係性の問題」が現在の障害的問題を形成していると考えると、愛着障害の子が思春期・青年期にさしかかった場合、「パーソナリティ障害」と診断される可能性が推測されます。(縦断診断ですよね)
「パーソナリティ障害」という見方をしても関係性の機能不全のために発達に問題がみられることもあり、例えば「反応性愛着障害(DSM-5)」のような対人交流の欠如を来している場合、成人では「スキゾイド・パーソナリティ障害」と診断され自閉症スペクトラム障害との鑑別が困難になります。
また5〜8歳で「無気力型・気分変調性障害」あるいは「軽症感情病性気分変調症」として発症する鈍い反応性と気力のなさ、無快楽症(アンヘドニア)、失敗に対する敏感さや、偏った考え方などが特徴の「自閉症スペクトラム障害を背景に持つ適応障害群」はスキゾイド・パーソナリティ障害と診断されるかもしれません。
また『さまざまな「慢性うつ病性障害」2』でふれた5〜8歳で「性格スペクトラム障害」あるいは「不安型気分変調症」として発症する「愛着/トラウマ関連の慢性うつ状態を呈する群」の場合は「境界性パーソナリティ障害」と診断されるかもしれませんね。
とくに性的虐待の既往があれば、思春期の家出や性的逸脱行為、衝動的な行動(問題行動)、自傷行為などを伴うことが多く、I軸診断としては、慢性うつ病性障害や不安障害、解離性障害、あるいは摂食障害(過食症)が挙げられ、いずれも対人関係療法の適応になりますよね。
その他にも、アルコールや薬物、ギャンブルなどの依存症、境界性パーソナリティ障害や犯罪・非行など反社会性パーソナリティ障害などの要因やリスクファクターに愛着の問題がなっているということですよね。
しかしながらパーソナリティは不変のものではなく以下のの3つの関与様式で規定され、それらの状況が変化すれば、当然、関与の仕方も変更を余儀なくされます。
身体を含む自己環境との関与の仕方(個人幻想)
他者との関与の仕方(対幻想)
集団や行事・仕事など事物環境との関与の仕方(集団幻想)
ちなみに。
個人幻想・対幻想・集団幻想については『愛着崩壊』と『刹那の反転3〜主体的意識の立ち上がり』を参照して下さいね。
この「状況の変化」という危機がある閾値を超えると発病ということになります。特定のパーソナリティが特定の疾患と結びつきやすいと考えるとそのパーソナリティは「病前性格(あるいは気質)」と呼ばれますよね。
ですから、診断の際には「もともとどんな人だったのか?」というパーソナリティの把握と(縦断診断)、その上で発症にいたる文脈について「clinical case formulation」(臨床判断)する作業は対人関係療法では必須となっていますよね。
院長