「内面に向かう」取り組みと摂食障害からの回復
[2016.02.29]
『8つの秘訣』では回復を妨げる行動に対し
しっかりと気づきを向ける取り組みがあります。
回復を妨げる行動としてあげられているのは
強迫的な運動 カロリーや、脂肪分、炭水化物などを計算する 食べ物に関する儀式(細かく刻む、チューイングなど) 自分と比較する(周りにいる人や雑誌やテレビに出ている人と) 身体をチェックする 痩せていなければ着られない服を持っている 断食する、老廃物を気にするなどの摂食障害行動です。 これらの行動のうち摂食障害から抜け出せなくしている行動を突き止め それらと取り組んでいく方法として3つのステップが紹介されています。 行動を変えるための3つのステップは
変えたいと思う行動について書き出し、気づきを高めよう 計画を立て小さなステップをこなしていこう 違いに気づこうということですが、大切なことは
行動をやめたり変えたりすることが難しい理由は、そうした行動のお蔭でしっかり振る舞えている、健全でいられる、安全な範囲内にいられる、とあなたがおそらくいつからか信じ込みようになっているからです。 行動をやめるという考え方を紹介されたときに、すぐに強い反発を感じたとしても驚かないでください。そう感じるクライエントさんたちは大勢います。 (中略) 変わるためには、状況をありのままに受け止める力や根気強さが必要ですが、あなたも自分にはそうした資質や能力がないと感じているのかもしれません。 (中略) しかし、思い出してみてください。それは典型的な「白黒」思考です。 (中略) 行動を変えるための方法は、練習しながら身につけていくものです。 『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店と、行動を変えることの回避につながる「白黒」思考に気づき 練習しながら身につけていく、と試行錯誤を勧めています。 これらの取り組みは「自分の状況を自覚する(自己客観視)」と 「行動変容」からなっていますよね。 対人関係療法とはまったく関係ないようにも見えるかもしれませんが
○ 自分の気持ちをよく振り返り、言葉にしてみる ○ 自分のまわりの状況に変化を起こすよう試みるの対人関係療法の原則を、自分自身との折り合いに適応すると 『8つの秘訣』と同じ取り組み方になるのです。 三田こころの健康クリニックでは 過食症やむちゃ食い障害の維持因子として 対人関係上の不和や学習性無力感、あるいは脳内劇場を考えますが じつは、対人関係上のストレスと感じられるのは 出来事そのものではなく、その出来事に対する自分のとらえ方、 専門用語で「表象」とよばれるものです。 摂食障害の患者さんの多くが、自分の気持ちがよくわからない アレキシサイミアと呼ばれる状態です。 自分の心でとらえた現実そのものが外の世界の現実であり、 別の考え方やとらえ方があるとは思えないのです。 ある出来事や人に対する感情は、自分の心が作り上げたとらえ方(表象)である という自覚がなければ自分の感情についての内省が生じないのです。 そのために三田こころの健康クリニックでは 「自分の心との向き合い方」としてマインドフルネスを指導しているのです。 『マインドフルネスの脳科学』で説明したように デフォルトモードネットワークの気散じや気そらしに対し マインドフルネスで気づき、行動に注意を集中するプロセスを繰り返し 次第に、心の中で動く考えや気持ちは 現実のとらえ方への反応にしか過ぎないと体験的に理解していくのです。 『8つの秘訣』にも
忘れないでほしいのは、衝動に従わずにそれらの行動をやめると、当初はとても不安が強くなるということです。 しかし、その不安をそのままにしていると、やがて衝動も、それに続く不安も、どちらも弱くなってきますので、時間とともにそれらの行動はやめやすくなるのです。 『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店と書いてあるように、「自分の気持ちをよく振り返る」という 「自分の心との向き合い方」は 『8つの秘訣』では「内面に向かう」と書かれていますが 「対人関係に変化を起こす」ことと並行して、 摂食障害から回復するには必要不可欠な要素なのですよね。 院長