行動の仕方を改善して摂食障害から抜け出す
「自己主張」「かわす」「壊れたレコード」のテクニックは、【自分自身との折り合い(自己内対話)】としても、他者とのコミュニケーションとしても、摂食障害から回復するために必要で、かつすごく大切なのです。
なぜなら「食べものとの関係と、どのように人間関係を築くかは、そちらもその人の特性と「人となり」に基づいているので、自然に似てきます。(中略)こうした関連性があるので、人間関係の築き方を変えると食べものとの関係も変わってくるし、逆もそうだと言えるのです。(8つの秘訣)」ということなのです。
三田こころの健康クリニック新宿では、摂食障害は「自分にダメ出し(攻撃)」をすることから始まると説明していますよね。
乱れた食行動で苦しむ女性の多くが、痩せさえすれば、不可解な不幸の原因が魔法のように一瞬で解決されると信じています。
しかし、目標体重だった頃の昔の写真を見ても同じことを思い、その頃自分がどんなに不幸に(そして太っているように)感じていたかを思い出します。そしてさらに目標体重を下げていくのです。
これはすべて、幸せというのは(体ではなく)心の状態だということを理解していないからです。ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
病気になる前は、ネガティブマインドのささやきを健康な部分が「大丈夫、時にはうまくいかないこともあるよ」となだめることができていますよね。
自分にダメ出しを続けていると、ネガティブマインドが「摂食障害の部分」に成長してしまいます。
そうなると、ダメ出しされて大きくなったネガティブマインド(摂食障害の部分)が、「太っている!やせなければ!」と指令を出し、その指示に従わざるを得なくなり、気持ちをなだめたり、麻痺させる行動としての摂食障害症状(乱れた食行動)が維持されてしまうのです。
もとはと言えば食べものと体重にまつわる否定的な気持ちに対処するための方法だった摂食障害行動が、今や、否定的な気持ち全般に対処するための方法に拡大してしまったと言えます。
コスティン『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店
ネガティブマインドが「摂食障害の部分」に成長して頭の中を占領してしまうと、「幸せは(体ではなく)心の状態」であることがわからなくなります。
そして、ますます摂食障害行動にのめり込んでしまい、摂食障害症状(乱れた食行動)が嗜癖(クセ)になったと感じられるようになるのです。
摂食障害のとても残念な側面は、精神的にいろいろ「狭くする」病気だということです。
当事者の方は、一日中、食事のカロリーや体重や、あるいは勉強や仕事の失敗のことを考え、他のことが考えられなくなってしまいます。
そういう生活が何年も続くと、自分の意識が「摂食障害であること」以外に広がりにくくなります。西園マーハ文「推薦の言葉」in『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
「摂食障害の部分」に成長したネガティブマインドが頭の中を占領してしまうと、ネガティブな気分を解消するための行動であった食べ物や体重のコントロールが嗜癖(クセ)行動になってきます。
そして「摂食障害であること」が防衛構造としての自己を形成してしまい、ますます生活が狭窄し、人生が混乱してしまいますよね。
あまりにも長く摂食障害に苦しんでいると、特にこれといった嫌な出来事があるわけではなくとも、摂食障害行動が容易に起きやすい状態になります。
繰り返しているだけで行動が習慣化して、ただ単に「できるから」とかいつもの癖でといった感じで、気がつくと過食や嘔吐をするようになります。摂食障害を通じてホメオスタシスを維持するようになった、といえるかもしれません。(中略)
実際、その段階になると、摂食障害行動に従事していないとかえって落ち着かなくなるでしょう。
(中略)
その状態になると、摂食障害行動をしていなければ感じるはずの気持ちにも、ほとんど気づかなくなります。
つまり、摂食障害行動をしていると自分の心の中にある気持ちに気づかなくなるのです。
このように、自分の気持ちを理解してしっかり感じ取るためには、摂食障害行動をやめることがただ大切なだけでなく、ぜひとも必要になるのです。コスティン『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店
「乱れた食行動(摂食障害症状)」から抜け出すには、心の中をふり返り、気持ちに気づき、言葉にするという「自己主張」に取り組むことが必要不可欠ですよね。
とくに「嗜癖(クセ)行動になった」と感じられている自己誘発嘔吐などの「排出性障害」がある人は、「気がつく(マインドフル)」によって自動操縦状態(マインドレスネス)から抜け出すことが治療の最初の取り組みになります。
三田こころの健康クリニック新宿では、「自己客観視の練習」をしていくと説明していますよね。
自己主張のスキルが伸びれば伸びるほど、人生の舵を自分が握っていると感じることができます。
そして、感情はコントロールできなくとも、それをどう経験するかはコントロールできるということに気づきます。もう制御不能になったり大暴れしたりすることを心配する必要もありません。
不可能なこと(感情をコントロールすること)をしようとすることで感じる、とんでもないプレッシャーから解放され、コントロールできているという錯覚を得るために体重や食べ物をコントロールする必要もなくなります。
ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
コントロールできるのは感情の体験の仕方であって、感情そのものではありません。
回復するためには、心の奥にある思考や気持ちにもっと健康的な方法で対処できるようになる必要があります。(8つの秘訣)
治療が初期から中期に入る頃には、多くの患者さんが「とくに出来事はなかったのに、過食をしてしまうんです」とおっしゃいます。
外的な出来事をネガティブに捉えることが減って、単なる日常の出来事のひとつと捉えられるようになった、ということです。
このようなときこそ、内的出来事、つまり、自分の「思考」に注意を向ける必要があります。
慣れ親しんだ考え方のパターン(自分へのダメ出し)がネガティブな気持ちを引き起こし、その気持ちを摂食障害症状(乱れた食行動)を使って、なだめたり、麻痺させたり、なかったことにしていないかどうか、自分の心の状態を注意深く観察する必要があります。
出来事が起きたとき、あるいは思考に巻き込まれたとき、引き起こされた感情の体験の仕方を変え、現実や考えとの向き合い方に取り組んでいくことを、三田こころの健康クリニック新宿の対人関係療法では【行動の仕方を改善する(感情・考え・情動のコントロールについての気づき)】と呼んでいるんですよ。
院長