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自分自身と他者との関係を改善し摂食障害から回復する

[2017.10.16]
愛着スタイルやコミュニケーションスタイルは、ダイレクトに対人関係に関わっています。 対人関係療法の治療者は、新しい愛着パターンを自由に形成できるよう患者さんを援助するために、愛着スタイルやコミュニケーションスタイル、治療意欲(変化への準備性)、洞察など、いくつかの要因をアセスメントしているんですよ。 対人関係療法では、摂食障害の維持因子として特に「対人関係上の役割をめぐる不和」と「対人関係の欠如(対人関係過敏)」に注目しますよね。 しかし「役割の不和」を対人関係療法の治療焦点領域として選ぶときは、交渉が再開したときに初めのうちは明らかな不調和が増えることが知られているんですよ。  
公式を使い始めるときには、大切な関係を築いてきた人たちに対しては、彼らの行動がどのように自分の感情に影響しているかを説明する理由を知らせておくとよいでしょう。 そうすれば、あなたがコミュニケーション方法を変化させるのは、彼らに「けんかを売る」ためではないと分かってもらえます。 ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
  ジョンストン先生も「自己主張」の練習を始めるときにはあらかじめ相手に伝えておくことを勧めていいらっしゃいますよね。 しかしそうであっても、自分もこれまでのやり方をすぐには変えられないように、相手も対応の仕方を変えるのは難しいのです。  
ときどき公式を使って自分の感情を伝えることができても、相手から衝突の原因をつくったと責められたりして、攻撃的な返答が来ることがあります。 そんなときに役立つのが「かわす」テクニックです。 文字通り、相手からの言葉による攻撃や非難、そして辛辣な言葉を追い払うことができます。 誰が正しくて誰が間違っているかというような不毛な議論から一歩身を引くことに役立ちます。 ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
  対人関係療法では「人の心の仕組みと動き方を知る」「怒りへの対処の仕方」を土台にして、「トラブルにならない言い方を身につける」という言い方で、この「かわす」プロセスを説明していますよね。  
誰かが、「君が敏感すぎるだけだ」とか、「そんなふうに感じるなんて馬鹿げている」とか、「あなたは間違っている」と言ってきたときには、自分の身を守るような言動をしないことが大切です。 代わりに、言いがかりから身を引くためにこのような対応をしてください。 「そうかもしれないね。……」(同意も反論もしていません) 「それがあなたの考え方だ、ということはわかります。……」 「あなたの意見を尊重します。……」 ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
  相手の言い分を尊重するというこの対応は、『摂食障害の部分と健康な部分の対話2』で紹介した「対話型・思考記録」の「共感・ねぎらい」に相当しますよね。 また【協調性】の「他者受容(自分と考え方・価値観の違う相手を認めることができる)」とも関係するのです。   多くの患者さんは、この部分がすごく難しいとおっしゃいます。 相手(あるいは摂食障害の部分)の言い分を認めてしまうと、「さらに攻撃されてしまうのではないか」と考えて心配になってしまうからです。 心配は失敗防止や問題解決に役立つこともあるので、そう感じるのも無理もないことですよね。   ここで目を向けて欲しいのは、「攻撃されてしまうのではないか」との考えを事実とみなして、その考えに対抗しようとしたり、その考えを信じて相手を遠ざけることで、どんな結果が引き起こされているのか?ということです。 「攻撃されてしまうのではないか」という考えを信じることで、自分の心の中で「摂食障害の部分と健康な部分」の対立が続き、対人関係でも「役割をめぐる不和」や「対人関係過敏」が続いて、その結果、「乱れた食行動(摂食障害症状)」が維持されてしまっているという事実です。 つまり、「攻撃されてしまうのではないか」という考えを信じることは役に立たない(非機能的)であるだけでなく、自分に悪影響を及ぼしているということなのです、と「自己内対話」で使う「悪循環の指摘」をしてみました(笑)。   ですから「別の受け止め方」、つまりジョンストン先生のいう「自己主張の公式」を使って、「自分の心に正直になる」プロセスが必要になります。  
このテクニックを使うと、自分の感情や、欲しいものや嫌なことにどれだけ簡単に集中していられるかに驚くはずです。 自分の感情と相手の感情の両方を尊重できると、自分の内面からの力の強さを感じるでしょう。 人間関係を終わらせたり、自分の考えや感情を見捨てたりすることなく、人と違う見方や考え方を持っていてもよいのだと主張できているからです。 ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
  このように、「自分自身との調和(「摂食障害の部分と健康な部分」の対立を終わらせること)」は、現実の他者との関係(協調性)と同じ次元で作用しますし、食べ物との関係にも影響します。 『素敵な物語』の「推薦の言葉」にもあるように、「摂食障害のとても残念な側面は、精神的にいろいろと「狭くする」病気だということです」とあるように、「気分解消行動としての食行動」から「食行動が嗜癖(クセ)となり防衛構造としての自己を形成」し、次第に「生活が狭窄し人生が混乱」していきます。 摂食障害は「回避の病い」です。さまざまな後付け理由(言い訳)を使ってそれを信じ込み、変化を含む状況を回避しようとし、また自分自身の心の動きを回避しようとします。 (『摂食障害を維持している対人関係パターンを変えていく』参照)   対人関係療法による治療では、「考えの内容を変えるのではなく、考えとの関わり方を変えること」、つまり、自分自身および他者との関わり方が機能しているかどうかに注目していくことで摂食障害から回復し、そして自分の価値に沿った生き方を創造していくことを目指すのです。   院長
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