ファットアタックって何?
先日から紹介している『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』の「訳者あとがき」に「ファットアタック」について、「もやもやした感じを表す言葉」と書いてありますよね。
『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』をお読みになった方なら「もやもやした感じ」はおなじみの感覚だと思います。
特に、「ファットアタック」という表現には心底共感し、「このもやもやとした感じを表す言葉があるんだ!」と、どこか安心した自分がいたように思います。
「ファットアタック」この耳慣れない言葉こそ、心の問題を心で処理できないために、実体的なものとして行動で解消しようとする摂食障害のカテゴリー・エラー、強迫性、あるいは行動嗜癖を表していますよね。
「ファットアタック」こそが、自分自身の心の中の男性性(思考)が、女性性(情緒的)の境界線を越えて侵襲している状態であり、自分と他者の間に分厚い壁があると同時に、その囲の中に他者を引き入れて手足のように使役したい願望の根っこでもあるように思えます。
ちょっと長くなりますが、引用しますね。
ここで「ファットアタック」という言葉を紹介します。乱れた食行動で苦しむ人は親近感を持つことでしょう。
ファットアタックというのは、まるで一晩で十キロも体重が増えたかのように、突然すごく太ったような感覚に陥ることです。現実には、一晩でそんなことは起こらないとわかっています。それでも、確かに十キロ太ったように感じるのです。
(中略)
ファットアタックに陥っているときというのは、何か他に、あなたの気分を害することが起こっているサインなのです。お母さんが言った事に腹を立てていませんか?
デートを控えて緊張していますか?
職場の上司にイライラしていませんか?
友達に言ってしまったことを後悔しているとか?こういった感情にどうやって対処したらいいのかわからないでいると、自分がどれだけ太っているかにひどく集中してしまい、本当に解決しなければならない問題は背景にかすんでいってしまいます。
自分が太っていると感じるのは、感情に直面するのと同じくらい辛いことですが、少なくとも、あなたには解決策がわかっています。体重を減らす、ということです。
(中略)
しかし、それから感じる安心感は一時的なものでしかありません。つまり乱れた食行動は、今経験している感情的なストレスから一時的に目をそらせる術に過ぎないのです。ストレスそのものを消し去ってくれるわけではありません。
食べ物に関する行動は、悲しみや怒り、恐怖から気をそらしてくれますが、そもそもの問題解決にはならず、むしろ悪化させてしまいます。内面で感じているストレスは大きくなり、乱れた食行動は増えるばかり。
何度も言いますが、食べ物や食行動で本当の問題は解決しないのです。
ジョンストン『摂食障害の謎を解き明かす素敵な物語』星和書店
これを読むと、このブログの読者の皆さんは『8つの秘訣』にも似たことが書いてあったような……と感じるかもしれませんね。
その通りです。
『8つの秘訣』のP.136〜137に【◎太っている気がする」は本当に気持ち?】というセクションにこう書いてあります。
ところが、体重計に乗って数キログラム増えたと知ったとたんに、突然太っている気がして、抑うつ感、無価値感、羞恥心といった気持ちが湧いてきて、そうした気持ちをなんとかして「解消」したいと思うのです。
しかし、考えてみてください。体重計の数値や数キロ体重が増えたことが、どうしてそれほどあらゆる気持ちを引き起こす原因になるのでしょうか。一般の人たちは、このように反応はしませんので、もしあなたがこのように反応するのでしたら、何らかの別な原因があなたの内面で起きているはずなのです。
外見の何かを変えれば内面の問題が解決するはずだと信じている間は、深い部分にある問題は潜んだままで、解決されることもないでしょう。
私たち著者は、「太っている気がする」と話す気持ちはわかりますが、同じ言葉でもそれが本当に意味するところは人によって違うので、あなたにとってそれが何を意味するのかは自ら紐解いてみる必要があるでしょう。
また、辛くて不快な気持ちを「太っている気」に変換するプロセスは、あなたの中でいつの間にか自動化されているかもしれません。「太っている気がする」と言うほうが、「寂しい」、「一生誰も愛せないのが怖い」などと言うよりも安全に感じられるからです。
コスティン他『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店
自分の内面で起きている「何か」が自分の外見、体重、体型に変換され(ファットアタック)、そのことで本当に解決が必要な問題が見えなくなるだけでなく、さらに悪化してしまうのが摂食障害です。
「秘訣3:食べ物の問題ではありません」でも書かれているように、摂食障害は本当に対処が必要な問題を見えなくしてしまうカテゴリー・エラーこそが「本当の問題」になります。
「対処が必要な本当の問題」を自分で紐解いていく、つまり自分の心の中の迷宮(ラビリンス)に足を踏み入れ、自分の中心(女性としての本質)に触れ、そこから新しいビジョンと新しいあり方(スキル)をもって現実と向き合っていく必要があるのですよね。
院長