メニュー

摂食障害の回復と本当に大切なもの

[2016.03.28]

過食やむちゃ食いは、感情不耐・気分不耐を背景にした気そらし・気散じのための気分解消行動であり、その根底にあるのは、気持ちや内的感覚を得体の知れないモノとしか感じられないアレキシサイミアやアレキシソミアなどの感情回避という特徴でした。

 

このことについて『8つの秘訣』には

摂食障害に苦しんでいるのでしたら、あなたは、少なくともどこかのレベルで、表面的な世界を生きているはずです。
あなたの人生に意味がないということではなく、人生の本当の意味を見失ってしまったと言うほうが近いかもしれません。
体重計の数値であれ、平らなお腹であれ、食べ物や身体についてのその他の強迫観念であれ、あなたが注目し、エネルギーを注いでいることが何であったとしても、あなたは本当に大切なものを見失っているのです。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

見た目や体重など評価の対象になる外側(外殻)から、「人生の本当に未という大切なもの」という内部の充実感への意味のシフトを促します。

 

その状態では、たとえ体重計の数値が理想的になったとしても、「私は愛されているのだろうか」、「心が満たされているのだろうか」、「人生には目的があるのか」といった人生の意味にかかわる深い疑問が消えることがありません。
愛と満ち足りた感覚を得ようとして、痩せた体型や食べ物からの安堵感を求めているかぎり、行動は一時的な意味と目的を持つかもしれませんが、あなた自身はずっとあくせくとして、みじめで、不幸せな状態のままでしょう。
摂食障害に苦しんでいるあいだ、あなたは一種の錯覚に陥っていて、あなた自身の価値が内面ではなく外側の表面的な世界にあるもの、つまり外見や食べ物や身体を支配する力といったいわゆる自我(エゴ)と結びついていると思いこんでいます。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

8つの秘訣』の8つ目の秘訣は「人生の意味と目的をみつける」ということですが、「人生にどんな意味があるのか?」は、アイデンティティが揺らぐ思春期の問いでもありますよね。

私自身も高校生になったばかりの頃に、この「問い」にぶつかりました。
「親の敷いたレールの上を生きていくことに価値があるのか?」答えに対する渇望を抱えながら表面的には生きていることのギャップに悩み、さまざまな本を読み漁り、大学ではいろんな分野の教官と話をする中でものの見方考え方の多様性が、すごく新鮮に感じられたことを覚えています。

当時、仮の答えとして考えていたのは、「人生の意味と目的はすでにある答えに気づくこと(自分のなかにすでに答えがあり、外界の出来事と共鳴している)」と、セレンディピティ(serendipity)とシンクロニシティ(synchronicity)を混ぜたようなユングやケン・ウィルバーの影響を受けて「自己実現」的な答えでしたが、その方法としての気づき(awareness)はいまでも私自身の支えになっていると感じています。
(私は運命論者・宿命論者ではありませんので、念のため!)

〜閑話休題〜

8つの秘訣』に戻ると、

私たち著者の最終目標は、あなた自身が存在している意味を、人間として生まれながらに持っている固有の価値と結びつけ、あなたが他の人たちや周りの世界と結びつくことができるようお手伝いすることです。
そのために、精神性や魂という聞き慣れないテーマに目を向けてみましょう。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

と書いてあるのを読んだとき、私自身、懐疑的になりました。

ここまで読み進めて、『8つの秘訣』に書いてある摂食障害の病理への目差しや、回復の方法論などは対人関係療法に対する隔靴掻痒の思いを払拭してくれるものでしたから、ここにきて安っぽいスピリチュアリティの話なら勘弁してくれ!と感じたのが正直な感想です。

 

しかしその直後に読んだパラグラフで、グエンさんが私と同じ反応をしていることでちょっと安心しました。

精神性や魂という言葉をキャロリンが初めて使ったときには、私の中で気持ちが落ち着かず、懐疑的になりました。
その頃の私は、自分を無神論者だと思っていましたので、「大いなる力」、「信仰を持つ」、「神にゆだねる、「宇宙の秩序を信じる」などといった深遠な概念にはなかなかなじめませんでした。こうした概念は、私がこれまで生きてきた世界にはなかった気がして、信じることが難しく、理解できるとはとても思えませんでした。
(中略)
精神性を探るということは、外見の姿形、日々の生活の試練や苦悩を越えたところにある、より深い意味と目的とのつながりを見つける作業です。精神性や魂とつながり合おうとするときには、本物とも、真実とも、可能とさえも思えない概念を信じる必要はありません。人生に深みと価値を感じられるようになればよいのです。
そのためには、表面的な事象から離れて、あなた自身の振るまい、あなたが息づくこの世界、愛する人たち、といったものとの深い絆を結ぶ必要があります。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

グエンさんの反応を読んで安心したところで、次回、精神性や魂の領域がどんなものかちょっと踏み込んでみましょう。

院長

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME