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摂食障害からの回復と意識のシフトチェンジ

[2016.04.11]

8つの秘訣』の「人生の意味と目的を見つける」の2つめの原理は「上手に注目する」ということでした。

おそらく、次のフレーズを聞いたことがあるでしょう。
「グラスの半分まで水が入っているとします。このグラスは、半分空っぽに見えますか、それとも半分満ちているように見えますか。」
おかしな例だと聞き流さず、この質問をよく考えてみてください。
半分空っぽのグラスに見える傾向があるのでしたら、あなたはもしかしたら、人生を満たしてくれているものではなく、むしろ人生で足りていないものに注目しがちなのかもしれません。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

つまり、ここで書かれていることは

私たちの気分を悪くするのは他人や出来事そのものではない。
それに対する自分のとらえ方である。
とらえ方を決めるのは自分のこころの姿勢である。
怖れを手放す』星和書店

と共通する考え方で、「自分のとらえ方」という注意の向け方によって、気分が悪くなるかどうかなど、人生の質と結びついているということですよね。

8つの秘訣』では「注意の向け方」と書いてあり、『怖れを手放す』には「こころの姿勢」とあります。
思考が生み出した頭の中のストーリー(脳内劇場)にとらわれ、ヴィヴィッドな現実の体験から離れてしまい、自分の内的体験や行為に無自覚な「自動操縦」の状態への対処ですから、現在の瞬間に中心を置く「あること(being)モード」への意識のシフトチェンジと考えると、「注意の向け方」が近いでしょう。

 

8つの秘訣』では、さらに簡単なワークが紹介されています。

どのようなことに注目するのかについて、かんたんな実験をしてみましょう。
あなたの家の近所にある木を一本思い浮かべて下さい。
イメージをはっきりさせたら、次の質問に答えられるかどうか試してみてください。
木の種類と樹齢はわかりますか。
その木について何か知っていますか。
どんな香りがしますか。

さて、この木が、今では世界に残るたった一本の木だと考えてみましょう。
木の存在意義がにわかに以前よりもずっと大きくなり、木そのものは何ひとつ変わったわけでもないのに、あなたも他の人々も、今までとは異なった形でその木に注目するようになります。
(中略)
慣れ親しんで生きた日常の一部だった木が、非日常的で神聖とさえ言えるものになったのです。
もしもこれが本当に起きたことだとすると、木そのものは変わっていないのに、あなたが木を眺めるときの見方と、注目の仕方が大きく変わったということなのです。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

視点の向け方(見方)をちょっとだけ変えてみるだけで、これだけ感じ方が変わってしまうのは面白い体験ですよね。

そういう方法として『8つの秘訣』では、「呼吸に注目するマインドフルネスの練習」が紹介されています。

このやり方は「思考に言葉でラベリングをする」やり方ではないので、指導者なしで行うことも可能な比較的安全なやり方と思います。

マインドフルネスというと、たいがいの人が瞑想を思い浮かべるようで、瞑想は難しいと思っている人も多いようです。
しかし、瞑想が本当はどういうものかを知っている人は意外と少なく、ほとんどの人が、謎めいたもの、また「心を空にする方法を知らない」から自分にはできない、と思っているようです。
瞑想にはさまざまな形がありますが、共通しているのは、思考中心から気づき中心への姿勢を変えて、奥底の本質(魂)と自我(あれこれ考える心)とを区別できるようにするということです。
瞑想の考え方自体は簡単ですが、実践しようとすると難しいものです。
「瞑想」という用語にマイナスの意味合いを感じるのでしたら、「内面に向かう」という表現に置き換えると、実際の取り組みをうまく表現しているのでよいかもしれません。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

摂食障害をきっかけに人生の質を向上させる』で

『8つの秘訣』では、「健康な部分」を「魂の部分」と呼んでいて、もしこの言葉に抵抗があるならば「心の本質(nature of the mind)」と、私がやっているように、読み替えてみてもいいかもしれませんね。

と書きましたが、このパラグラフを読んだ感じでは、「魂」よりも「心の本質」がしっくりくる感じがしますよね。

 

このマインドフルネスや瞑想の感想をグエンさんが書いていらっしゃいました。

心の中を巡る考え、つぶやき、恐怖、問題といったものに翻弄されて右往左往すると、いとも簡単に犠牲者のような気持ちになるもので、そこに摂食障害の声が朝から晩まで聞こえてこようものなら、なおさらです。
私が初めて瞑想とマインドフルネスについて耳にしたとき、これはニューエイジ風の希望に満ちた方法なのかと思いました。
しかし、病気からの癒やしと自分の成長を求めて模索するなかで、形を変え、領域を変えて、同じ考え方に何度も行き当たったのです。そのうち、ひょっとしたらこの実践法には、目を向けてみるだけの価値があるのかもしれない、と考えるようになりました。
(中略)
私が何よりの見本ですが、あなたも、たとえはじめは自分にはできないと思っても、自分の中の混乱と絶え間ない自己批判から注意をそらし、もっと穏やかで平和な空間に心を移動させることができるようになるでしょう。
摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店

「さまざまな理由から、瞑想が必ずしもあなたに合った方法とは限りません。」と『8つの秘訣』に書いてあるように、もし瞑想という形でマインドフルネスに取り組むのであれば、瞑想に十分熟達した治療者を選ぶ必要があるということですよね。

院長

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