摂食障害からの回復とジャッジメント
もう一つのブログ『如実知自心』で書き進めていますが、自分のこころへの向き合い方と対人関係におけるコミュニケーションには以下の4つのポイントがあります。
1. 自分の気持ちに正直になる(嘘をつかない)
2. 思考や感情と折り合いをつける(仲違いをしない)
3. 脳内のおしゃべりを反芻したり増幅したりしない(悪口をいわない)
4. 自分のこころの中で起きることを大切にする(無駄話はしない)
(カッコの中は対人関係で使うときのポイント)
すごく当たり前のことのようですが、自覚がないと難しいですよね。
『8つの秘訣』の「人生の意味と目的を見つける」の3つめの原理は、「批判せずありのままに話す」ということで上記の2.と3.とも重なる「ジャッジメントを手放す」ということです。
誰かがあなたの気持ちを傷つけて不愉快にしたとしたら、その時に傷ついているのはあなた自身の自我です。
自我はそれに反応して、お返しをしたがるかもしれません。
もしもあなたが怒りと批判を武器にその人に激しく反応するとしたら、それはあんたの自我が相手の自我に反応を起こしていて、自我同士のぶつかり合いになっているのです。
(中略)
たとえば、友達があなたに嘘をついていたことがわかったとしましょう。
そこであなたの自我が傷ついて、否定的で批判的に反応し、友達に対して大声で罵ったらどうなるでしょう。
こうした反応は、どれもあなたが本当に望んでいる結果をもたらしてくれるものではありません。
『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店
ここでいう「自我」、つまり「エゴ」は、良い/悪いという価値判断(ジャッジメント)や決めつけによって「頭の中の言葉(内言語)」である「思考」が優位になった状態のことで、心が傷を負って血を流しているのではなく、自我(エゴ)が傷ついたと感じているだけということですよね。
このような怒りの扱い方、心の使い方は三田こころの健康クリニックの対人関係療法の導入部分で行うので、通院中の方はご存じですよね。
『8つの秘訣』には
批判せずありのままに話すためのとても大切な第一歩として、あなた自身の内にある怒りや激しい気持ちをすべて落ち着かせ、平穏な状態にする必要があります。
これは、言葉だけの問題ではなく、言葉の背後にあるエネルギーや感情にもとても大きく関係しています。
否定的なエネルギーを身体からすべて外に出すには、散歩に出かける、音楽を聴く、日記を書く、瞑想する、マインドフルネスの練習をするなど、気持ちを穏やかにして平常心に戻ることができるような活動でしたら何でもかまいません。
『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店
と書いてあるのですが、ここで注意が必要です。
それは「気持ちを穏やかにして平常心に戻ることができるような活動」が、怒りや激しい気持ちに対する抑圧や回避になってしまうと、逆にそれらの気持ちは大きくなってしまう、ということです。
そのため「気持ちを穏やかにして平常心に戻ることができるような活動」は、体験に巻き込まれて脳内ストーリーを作りだしているデフォルトモードに気づき、観察主体を呼び覚ますことが必要になります。
自我は反応するけれども魂は対応するものなのだと、今ならよくわかります。
いざというときに思い出すのは大変な事ですが、それでもだいたいいつも一歩下がって、私はこの状況をどのように受け止めたいのだろう、私のどの部分が表れてきているのだろう、と自分に向かって問いかけられるようになりました。
『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店
とクライエントさんの一人が書いていらっしゃいます。
もう一つ大切なことは、「観察主体」が優位になってくると
特定の周波数の共鳴を引き起こす音叉のように、自分が魂の部分でつながり合っているときには、周りの人も同じ状態を体験しやすいようです。
『摂食障害から回復するための8つの秘訣』星和書店
ということですから、批判をしないということは、じつはマインドフルネスの状態(観察主体)にシフトするということなのです。
三田こころの健康クリニックでマインドフルネスを指導するときに、考えにふけったり感情や感覚に引っ張られる日常の意識状態と思考や感情、感覚をただ見守るだけの「あるがままの気づき(開放性・明晰さ)」の状態との違いについて説明しますよね。
「ジャッジメントを手放す」という考えも実はジャッジメントですから、くつろいで、一歩うしろにさがって心を見つめていれば、さまざまな思考や感情はただ無限の心の中に生まれては消えていくだけで、心の中でさまざまなことが起きても、心は何の影響も受けないことが少しずつ体感されるようになってきます。
この状態を「魂は対応するもの」とか「平常心に戻る」と表現されているのですよね。
院長