摂食障害は入院すれば治る?
三田こころの健康クリニックで患者さんから聞いた話では、ある大学病院で「そのうちに治る」と言われたり、某クリニックでは「ただのクセじゃないの?」と言われたり、ひどいところでは「摂食障害は治りません!」と宣告されたり、摂食障害の治療を専門に行っている医療機関はほとんどないのが現状です。
出来事に衝撃を受けて、食べられなくなった患者さんが、ある高名な身体科の治療者に相談したとき、「どうして私の言うとおりに頑張って食べないのっ!」と叱られたなど、『摂食障害の不安に向き合う』の「はじめに」に書いてあるような心の問題という視点を持たない専門家もいらっしゃるのです。
日本摂食障害学会や日本摂食障害協会が中心となって精神科・心療内科外来のある救急医療体制が整備された総合病院のうち、5か所を「摂食障害治療支援センター」として指定するという「摂食障害治療支援センター」構想も進んでいるのですが、上記のように摂食障害の理解や診断すらお寒い状況で、さらに治療となると、いまだにエビデンスのない薬物療法のみのところがほとんどです。
(摂食障害では、薬物療法が主役となることはありません)
『過食をがまんすれば摂食障害は治る?』にも書いたように
拒食症も過食症も、症状を抑えれば治るという単純な病気ではありません。
症状はストレスの表れです。
なぜその症状が表れているのかということを理解しなければ、対処することができません。
水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店
ということを理解せずに、やみくもに過食を抑えようとして、それが出来ないと、患者さんに不機嫌になる治療者も多いのです。
摂食障害の治療では、体温計の数字のようなものである「過食/むちゃ食い」をどうやって止めようと考えるのではなく、「なぜ「過食/むちゃ食い」という症状があるのか?」と摂食障害の維持因子である症状とストレスとの関連を見ていく必要がありますよね。
また水島広子先生も
患者さんやご家族からよくいただく質問に、「入院すれば治りますか?」「学校をやすませてしばらく治療に専念させようと思うのですが」というものがあります。
少なくとも過食症については、入院は必要ありません。
拒食症については、本当に命の危険があるようなときには緊急避難的に入院していただくこともありますが、それは治すためというより一時しのぎです。
つまり、入院は摂食障害の治療法ではないということです。
水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店
と書いてあるのですが、過食症の人も「入院すればよくなるかもしれない」と淡い期待をもって入院し、結局よくならずに治療を諦めてしまった人も多いのです。
上記の「摂食障害治療支援センター」では急性期における摂食障害患者への適切な対応、つまり「命の危険があるようなときの緊急避難的な入院」ということをしっかり理解しておく必要がありますよね。
また、「治療に専念できる環境」というのも、たいへん誤解されやすい概念です。
精神的な病は、日常的な対人関係の中で作られるものだからです。
そこから隔絶されたところで治しても意味がないし、そもそもそれは本当に「治った」とは言えないということになります。
水島広子『拒食症・過食症を対人関係療法で治す』紀伊國屋書店
とくに『非定型の摂食障害〜制限摂食』や『非定型の摂食障害〜食物回避性情緒障害』、あるいは『習慣および衝動の障害としての過食症』では、入院により一時的に食べられるようになったり、過食/むちゃ食いが止まったかのように見えるのですが、退院するとまた食べられなくなって体重が減ったり、過食/むちゃ食いが始まったというのはよく聞く話です。
「なぜその症状が表れているのかということを理解」するためには、三田こころの健康クリニックの初診で行っているように、元々どんな人で、人生のどのあたりからどういうきっかけで、どういう病気を発症したのかという診断と、それが現在まで続いているのはなぜなのか、どこをどのように変えていけば、どう治っていきそうか、という精緻な診断とアセスメントが必要ですから、もう治らないとあきらめる前に三田こころの健康クリニックに相談してみてくださいね。
院長