変化の時期の乗り越え方〜不安型気分変調症(性格スペクトラム障害)
気分変調性障害(慢性うつ病)の亜型の「不安型気分変調症(性格スペクトラム障害)」は、対人関係で自分に対する批判に敏感で、相手に嫌われたのではないかとひどく気にするという特徴があります。(『非定型うつ病と気分変調性障害(慢性うつ病)』参照)
社会的な変化だけでなく、親しい人との関係が物理的に離れてしまうとか、自分や相手の状況が変わってしまうなど、「不安型気分変調症(性格スペクトラム障害)」の人は不安定で些細なことに動揺しやすくなります。
変化の前にはそれなりの悩みや不安もあったはずなのですが、変化に際して感じる不安によって、ほとんど忘れ去られて良かったことだけが思い出され、逆に、新しい役割については嫌な面や不安な面だけが目につきやすくなります。
『変化の時期の乗り越え方〜気分変調性障害(慢性うつ病)』でも触れたように、「…ねばならない(べき思考≒完璧主義)」は、変化のときに指標にすべき気持ちを覆い隠してしまい、「不安」という症状を介したコミュニケーションが多くなり、ますます現実から離れてしまいやすくなるのです。
さらに人間関係の枠組みが変わってしまうということは、慣れ親しんだ人間関係から新しい人間関係を作り上げていく課題になりますが、「不安型気分変調症(性格スペクトラム障害)」の人は人とのやり取りの形式が変わる変化には敏感に反応してしまうものなのです。
(摂食障害、とくに過食症を併発している方も同じように感じられるみたいです。)
とくに愛着の安全基地が不安定な「不安型気分変調症(性格スペクトラム障害)」の人は、サポーターとの関係が変化してしまうと霧の中で遭難してしまったかのような気持ちに襲われます。
このような変化の時期を乗り越えるためには、リソースを見直して機能的な形にすることもあれば、新しいリソースを開拓する場合もあり、その中で共感や愛情、肯定的な評価など「誰でも感じる不安」の安全感を高めていくと同時に、「対処可能な不安」に対して問題の解決に必要な情報やアドバイスなどの提供など、ソーシャルサポートを再構築することが重要になります。
そうは言っても変化の時期には「不安型気分変調症(性格スペクトラム障害)」の人は「自分には出来ない」という絶望感が強まるものです。
しかしながら新しい役割で不安を感じるのは当然で、いつまでも同じ強さの不安が続くわけではなく、慣れてくればやわらいでいく「誰でも感じる不安」と現在の不安を肯定することが大切なのです。
これについては、似て非なる考え方を頭のなかでしてみたことのある人は多いと思います。
「気にしないようにしよう」と呪文のように自分に言い聞かせるようなやり方です。
でも、そういう方法は、まず、うまくいかなかったでしょう。
なぜかというと、「気にしないようにしよう」というところに力点が置かれているために、現在の感情を肯定するという重要なテーマが抜け落ちてしまっているからです。
そうすると、気にしないようにしようとすればするほどますます気になる、という状況に陥ってしまいます。
水島広子・著『対人関係療法でなおす 社交不安障害』創元社
「誰しも感じる不安」は、自分できちんと受け止め、他人にも共感してもらうことで現実とのつながりができ、不安という靄は少しずつ晴れていくだけでなく、不安による身体の反応も緩和されていきますよね。
そして、変化のプラスの側面もみるという現実に取り組んでいく次のステップへ進むことが出来るのですよね。
院長