「新型うつ」と「うつ病」について
第10回日本うつ病学会で「いわゆる『新型うつ病』に対する学会見解を目指して」というシンポジウムが開かれました。
いわゆる「新型うつ」あるいは「現代型うつ」は、伝統的なうつ病として知られるメランコリー親和型や内因性うつ病とは異なり
(1) 若年者に多く、全体に軽症
(2) 仕事では抑うつ的になるが、余暇は楽しく過ごせる
(3) 就業・就学上のストレスにより発症する
(4) 成熟度の低さや他者配慮の欠如などの病前性格がある
と日本うつ病学会のQ&Aに記載されています。
従来のうつ病は、「反応性(あるいは心因性、神経症性)うつ病」「内因性うつ病」に分類されていました。
「反応性うつ病」は、発症の背景に対人関係によるストレスなど心理的な要因が存在するものを指し、ストレスへの対処・対応が行われ、「内因性うつ病」は、心理的な背景では理解できないうつ状態に陥る原因不明のケースで、主に薬物療法が行われていました。
米国精神医学会の「精神疾患の分類と診断の手引(DSM)」により、うつ病とうつ状態の線引きが曖昧になり、たとえば、適応障害やパーソナリティ障害でもうつ症状があれば「うつ病」との診断になります。
このことが「新型」あるいは「現代型」と呼ばれる「うつ状態」に混乱をもたらしていること、1990年代から「うつは心の風邪」というキャッチフレーズで啓蒙活動や薬物療法プロモーションが盛んになったこともあり、【うつ病〜うつ状態〜抑うつ】の多様性に拍車をかけたといわれています。
ちなみに。現在、「新型うつ」や「現代型うつ」と呼ばれる状態は、上記のような特徴に故・樽味伸先生が「ディスチミア(気分変調性)親和型」と名付けたのが始まりです。
それが一般に流布されるときに「新型」とか「現代型」のようにわかりやすい名前に置き換えられたのではないか、といわれていす。
そもそも。
上記のような「新型うつ」の特徴は、現代の若者に共通する一般的な特徴であり、なんらかの原因で精神的な不調に陥ればこれらが強調されることもあり、このような特徴をカテゴリー化する意義は乏しい、という意見が出されました。
確かに、広汎性発達障害やアスペルガー症候群など自閉症スペクトラム障害でも、幼少期に診断を受けていない人が思春期〜青年期で不適応をきっかけに発達障害らしさ、アスペルガーらしさが強調されることはよく知られており、これを二次障害と呼びますよね。
この不適応や躓きによる精神的な不調が「適応障害」と呼ばれる状態ですから次回は、「適応障害」という観点からみた「新型うつ」について日本うつ病学会のシンポジウムをまとめてみますね。
院長