社交不安障害(社会不安障害)
社交不安障害とは?
「他人からどう見られているのか」「どう思われているのか」という気持ちは、誰もが多少なりとも持っています。
しかし社交不安障害では、こうした気持ちが強くなりすぎて、日常生活に支障をきたしてしまいます。
また、普通であれば、経験を繰り返すことでさまざまな不安に対して徐々に慣れていきますが、社交不安障害では、繰り返しても慣れることができず、毎回襲われる不安に苦しむことが続きます。
その結果として不安なことから逃げてしまうようになり、本来やりたかったことができなくなってしまったり、可能性を狭めてしまうことがあります。
社交不安障害は性格の問題と思ってしまうことも多いですが、病気として治療に取り組むことで、生き方が変わる方もいらっしゃいます。
原因
原因ははっきりとはわかっていません。遺伝的な要因と環境的な要因、どちらが強いというと環境的な要因といわれています。
環境要因としては、以下のものがあげられます。
- 育ってきた環境
- 何らかの失敗体験
- 役割の変化 など
親を見て学ぶという側面もありますので、そういう意味では遺伝と感じてしまうことも少なくありません。
自己肯定感が低かったり、困難に対して回避する行動パターンを学習してしまうことは、大きく影響します。
また、人前で恥をかくような体験をしてしまうと、恐怖心が芽生えてしまうこともあります。他人の失敗を見て、イメージから恐怖心を抱いてしまう方もいらっしゃいます。
これまでは問題がなかったにもかかわらず、社会的な役割が変化することで注目を浴びる機会が多くなったり、周囲から期待される像と自己像のギャップが大きくなることで、社交不安が強まることもあります。
社交不安障害の方は、無意識に他人の表情を怖いものとして受け取ってしまう傾向があるとされています。
このような表情認知のゆがみが、おもに環境の変化をきっかけとして強まり、必要以上の不安や恐怖を生みだしてしまうともいえます。
症状
社交不安障害の基本的な症状は、「周囲から評価されるような状況」における過剰な不安や緊張です。
それによって現れる症状は人それぞれです。不安や恐怖が心身の症状を引き起こし、それがさらに苦手意識を強めるという悪循環をもたらします。
精神症状
- 過剰な不安や恐怖
- 頭が真っ白になる
身体症状
- 息苦しさ
- 動悸
- ふるえ(手足や声)
- 発汗
- 赤面
行動への影響
- 準備に必要以上の時間がかかる
- 他のことが手につかなくなる
- 人前に出るのを避けてしまう
HSPと社交不安障害は違う?
最近ではHSP (Highly Sensitive Person)という言葉が使われることが多くなり、社交不安障害でお困りの方も、自分はHSPではないかと感じている方もいらっしゃるかもしれません。
HSPとは心理学的な概念で、環境感受性の高い方のことを意味します。良くも悪くも、環境への影響を受けやすい方のことをいいます。
社交不安障害は、社交場面における過度な緊張感が問題になるため、本質的にHSPとは異なります。
2つのタイプ
社交不安障害は2つのタイプに分けることができます。
- 全般型:人と接すること全般において起きる
- パフォーマンス限局型:ある特定の状況で起きる
全般型では対人関係に広く影響がおよび、この症状がもっと悪化すると、マイナス思考に陥り、苦手な状況から逃げるようになり、不登校や引きこもりなど生活に支障を来してしまいます。
パフォーマンス限局型は、苦手な状況に対する恐怖に近いです。あがり症とも呼ばれています。
苦手なことに対して、それぞれ以下のように名前をつけられることもあります。
- スピーチ恐怖症:人前で話すのが怖い
- 赤面恐怖症:人前に出ると顔が赤くなってしまうのが怖い
- 電話恐怖症:電話をするのが怖い
- 視線恐怖:人に見つめられるのが怖い
- 震え恐怖症:人前に出ると緊張で手が震える
- 会食恐怖症:人前で食事をするのが怖い
- 発汗恐怖症:人前にでると緊張から汗をかいてしまい、恥ずかしくて怖い
- 書痙(しょけい):文字を書くときに手が震える
治療
社交不安障害の治療には、大きく分けて2つの戦略があります。
- お薬で悪循環を断ち切り、少しずつ慣れていく
- お薬で苦手な場面をしのぐ
全般型の場合は生活全体への影響が大きいため、前者の治療により少しずつ根本的な改善を目指していくことが望まれます。
パフォーマンス限局型は、社交不安を感じる機会が多い方は前者を、少ない方は後者を取ることが多いです。
社交不安障害で使われるお薬
基本的な治療は薬物療法と行動療法になりますが、薬との相性などを確認しながらの治療となります。
お薬をしっかりと使っていくことで悪循環を断ち切る場合は、抗うつ剤を使っていくことが多いです。
その他に、症状を和らげるレスキュー薬として、以下のようなお薬が使われます。
- 抗不安薬(精神安定剤)
- βブロッカー(交感神経の働きを抑えて、動悸や不安を和らげる)
- 抗コリン薬(汗を止める)
お薬に頼らずに行動療法だけで治療することもできなくはありませんが、荒療治になってしまい、むしろ苦手意識を強めてしまうこともあります。
お薬を適切に使って心身の反応を和らげたうえで行動療法を行っていくほうが、少しずつ着実に社交不安は薄れていきます。
社交不安障害でお困りの方へ
人前に立つと緊張するのは、誰にとってもごく自然なことです。ですがあまりに緊張が強く生活への影響が大きいと、社交不安障害として治療が必要になります。
当院では社交不安障害の治療に力をいれており、あがり症のレベルから、人との交流そのものが苦しい全般型まで治療を行っております。
社交不安障害でお困りの方は、お気軽に当院へご相談ください。
社交不安障害についてさらに詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください