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広汎性発達障害(アスペルガー)

広汎性発達障害(自閉症スペクトラム症/アスペルガー症候群)とは

広汎性(こうはんせい)発達障害とは「発達障害のひとつでコミュニケーション能力や社会性に問題を抱えることが多いのが特徴」です。言葉の遅れや知的障害はなく、小さいころに気づかれにくい傾向があります。

以前、アスペルガー症候群や自閉症、広汎性発達障害などさまざまな名称で呼ばれていました。

2013年に発表されたアメリカ精神医学会のDSM-5診断基準により、下記4つの名称をまとめて「自閉症スペクトラム症候群(ASD:Autism Spectrum Disorder)」としてまとめて表現するようになりました。

  • 自閉症
  • アスペルガー症候群
  • 小児期崩壊性障害
  • 特定不能の広汎性発達障害

自閉症スペクトラム症の割合は人口の約1%とされており、男女比は4:1と男性の比率が多いのが特徴です。

ただし、自閉症スペクトラム症と判別されてないケースもあり、それらを含めると割合は上がると予測されてます。さらに、自閉症スペクトラムは、下記の発達障害を併発している場合があります。

  • 注意欠陥多動性障害(ADHD)
  • 学習障害(LD)
  • そのほか(チック、吃音など)

自閉症スペクトラム症の患者さまは、ほかの方とのコミュニケーションが苦手で日常生活に支障をきたすことがあります。

広汎性発達障害の原因

広汎性発達障害の原因はまだはっきりとわかっていません。

現段階では、遺伝的な要因により生まれつき脳機能障害があることが考えられてます。また、出生前の風疹やサイトメガロウイルスなどのウィルス感染も危険因子となる可能性があるとされています。 さらに、1990年代、麻疹・ムンプス・風疹(MMR)と自閉症の関連が懸念されましたが、そのあとのさまざまな研究で、予防接種との関係も否定されています。

「自分の育て方が悪かったのか?」「子育てのときにもっと注意していればよかった」と不安を感じたり悩んだりする保護者の方もいるでしょう。

ただし、子育ての仕方や療養環境が原因で自閉症スペクトラム症やアスペルガー症候群などの広汎性発達障害を発症するわけではありません。

保護者の方は、自分を追い詰めたり悩み過ぎたりしないでくださいね。

広汎性発達障害の症状

広汎性発達障害の症状は大きく分けると以下の通りです。

  • コミュニケーションが苦手
  • 特定のものへの強い興味
  • 感覚の過敏さ

広汎性発達障害の特徴はさまざまで、症状には個人差があります。

乳児期には症状が現れますが、症状が完全に治ることはありません。そのため「広汎性発達障害の症状とうまく付き合うこと」が重要です。ここで、代表的な広汎性発達障害の症状を紹介します。

  • 言葉の遅れや言葉をそのまま返す(オウム返し)
  • 手をふる、からだをゆらすなどの動作を繰り返す
  • 一方的に話したり、話題が限定されていたりするため会話が成り立ちにくい
  • 感情をうまく出せない
  • こだわりが強い
  • 対人関係を築けない
  • 抱っこや触られるのを嫌がる
  • ひとり遊びが多く、ごっこ遊びを嫌がる
  • 活動や興味の範囲が狭い(偏っている)
  • 予定外のことに対する不安が大きい 
  • 感覚に敏感すぎる、もしくは鈍感すぎる
  • 学校で先生の話を聞けない
  • 授業中に頻回に立ち上がる
  • 気温の変化や環境の変化が気になる など

広汎性発達障害の方のなかには、知的発達の遅れが見られない場合もあります。そのため、広汎性発達障害と気づかれずに、周囲からただ「空気が読めない」「コミュニケーション力が低い」など誤解を受けることがあります。

また、大人になるまで、広汎性発達障害と診断を受けない方もいらっしゃいます。その結果、日常生活において適切な支援が受けられないため、ご本人はつらい思いをしているケースは少なくありません。ご本人やご家族の方など気になる症状がある場合は、発達障害の専門家にぜひ相談してみてください。

広汎性発達障害の併存症

広汎性発達障害では、ほかの健康問題が同時に見られるケースもよくみられ、このことを併存症といいます。

自閉症スペクトラム症で約7割の方は「こころの健康問題」が併存してます。代表的なものは「知的障害」「ADHD」「不安症」などです。

また、そのほかの併存疾患の代表例はてんかんと睡眠障害です。知的障害が重い人ほどてんかんの併存が多く見られます。

広汎性発達障害の診断

広汎性発達障害の診断は、アメリカの精神医学会の定める基準(DSM-5)に基づき、次のような条件が満たされたときに診断されます。

コミュニケーションや関わり合うことにおいて困難な状態が続くこと
以下のような症状が2つ以上ある
  • 同じ動作を繰り返す(例:手をふる、身体をゆらすなど)
  • 同じフレーズを使う(例:本人にとって響きが心地よい言葉や好きな言葉など)
  • 特定のものごとに強い興味を示す(例:電車やバスなど)
  • 新しいことにあまり興味を示さない(例:ほかの子どもに興味がない、新しいおもちゃに興味がないなど)
  • 特定の感覚に敏感または鈍感である(例:光や音など)
発達早期から①・②の症状が見られている
年齢や成長にあった人との関わりや学校・職場での活動がうまくいかない
これらの障害が単に知的な問題や成長速度が遅いからではなく、ほかの理由がある

参照元:ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について | e-ヘルスネット(厚生労働省)

これらに加え、発達の過程や現在の状況に関してもくわしく確認します。問診の具体例は以下のとおりです。

  • 出生時の体重
  • 運動発達の状況
  • 人見知りの程度
  • 特定のものへのこだわりの有無や程度 など

診断は一度ですべてを把握することが難しく、一定期間(数ヶ月)かけておこなう場合もあります。そのほかの病気の疑いがある場合には、血液検査や脳波検査もあわせておこないます。

広汎性発達障害の治療法

広汎性発達障害の根本的な治療は確立されてません。

そのため、広汎性発達障害の症状とうまく付き合うために個別で管理したり、QOL向上のために支援したりすることが必要です。

薬物療法で「こだわり」「多動」「かんしゃく」などの症状を軽減でき、さらには、併存するほかの症状改善にも役立ちます。

広汎性発達障害の方は、その方それぞれの方法でものごとを学びます。そのため、本人にかかわりのある人(両親・学校の先生・職場・医師や心理士など)が連携をとり、本人の課題に合わせた支援が重要です。

支援の具体例は以下のとおりです。

  • 「〜をしましょう」「〜をやってください」など文章はシンプルにする
  • イラストや図を使い、視覚に訴える
  • 口で説明するだけでなく、実際にやってみて手順を教える
  • 具体例を見せる
  • 新しく挑戦することは少しずつ慎重に進める
  • 感覚過敏に対し、音や室内の温度など調整できることは積極的に調整する など

自閉症スペクトラム症は、同じ年齢の人と比べると、できないことが目立つケースがあります。その結果、周囲から強くあたられたり、怒られたりするなど日頃から強いストレスを抱えている場合があり注意が必要です。

また、療育環境や学校教育、就労支援など生涯を通した支援や周囲に対する症状の理解など包括的な支援が求められます。

広汎性発達障害でお悩みの方へ

広汎性発達障害の症状により、対人関係や同じ動作を繰り返すことなどから感じる「生きづらさ」は、環境を変えることで改善できる可能性があります。

広汎性発達障害の症状は個人差があり、それぞれに合った対応が必要です。

もしなにか気になる症状がある場合には、お気軽に当院までご相談ください。

なお発達障害の診断には「複雑心理検査」が必要となる場合があります。当院では、連携している精神科・心療内科のクリニックに検査を依頼しつつ、当院内で発達障害のサポートをしています。

さらにくわしく発達障害について知りたい方は、以下をお読みください。

【こころみ医学】発達障害について

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

参考文献・サイト

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