適応障害
適応障害とは?
適応障害とは「ストレスが原因となり、心身のバランスが崩れることにより社会生活に支障をきたした状態」のことです。[1]
仕事や学校、家庭などの環境に適応しようする際に、ストレスを抱え発症する病気です。わが国では、適応障害を抱える患者さんは増加傾向であるものの、その要因は明らかとなっていません。[2]
適応障害は、家族や同僚などの周りの人から「甘い」「頑張れば何とかなる」「気持ちの問題」とされる場合もあり、治療に繋がらないケースも多数あります。
適応障害で強いストレスを抱えたままであると、うつ病になることも珍しくありません。
生活に支障が出るほどの強いストレスを抱えている場合、精神科や心療内科などの医療機関で適切に治療することが望ましいといえるでしょう。
適応障害の症状
適応障害の症状は、ゆううつな気分や不安感をはじめ、頭痛や不眠などです。[1]こころの症状が行動に影響する場合があります。
適応障害と診断された方には、ほかにも以下のような症状がみられます。
精神症状(こころの不調)
- 気分が落ち込む
- 不安感が強まる
- 神経質になる
- 焦る気持ち
- 意欲が低下する
- 集中力がなくなる
身体症状(からだの不調)
- 眠れない、または寝過ぎてしまう
- 食欲が低下する、または過食になる
- 胸がドキドキする
- 吐き気、めまいふるえ
- 頭が痛い
行動の異常
- お酒やタバコの量が増える
- 涙もろくなって泣く、わめく
- 浪費行動が抑えられない
- 周囲とのトラブルが増える
- 暴飲暴食が止められない
- ストレスが溜まりモノに当たる
これらの症状は、一般的に病気でない方にもあらわれる症状です。
ただし、適応障害の場合、それを超えた過敏な状態となります。通常、ストレスがなくなったあと、6か月間を超えて続くことはありません。[3]もし、症状が続く場合は、うつ病や統合失調症などほかの精神疾患が考えられるでしょう。
適応障害の原因
適応障害の原因はストレスです。このストレスがはっきりしていることが特徴のひとつです。ストレスとなりやすいのは「学校」「職場」「家庭内」の人間関係とされています。[4]
学校の人間関係
- 学校の入学や進学
- クラス替え
- いじめ
- イヤな先生の存在
職場の人間関係
- パワハラやセクハラ
- イヤな同僚や上司の存在
- 就職や転職
- 劣悪な労働環境
- 昇進や降格
家庭内の人間関係
- 同居している家族とのトラブル
- 交際しているパートナーとの別れや結婚
- 妊娠や出産
- ワンオペ育児
- 義親との関係
結婚や昇進など周りの人からすると一見、嬉しい、喜ばしい出来事でも、患者さまにとってはストレスの一因となるかもしれません。
進学や就職をはじめ、結婚や出産などのライフスタイルの変化があり、人との関わりの中でストレスを感じることがあります。結果として、こころや身体に影響があらわれることは珍しくないでしょう。
適応障害の診断基準
適応障害は、国際的な診断基準をもとに以下4つで診断されます。
- ストレスの原因が明確であり、ストレスを感じて以降、3か月以内で症状があらわれている
- ストレスが強い苦痛となっている、または生活に支障が出ている
- その他の精神疾患や、大切な人を亡くした喪失感(死別反応)ではない
- ストレスの原因がなくなると6ヶ月以内に症状が改善する
出典元:日本精神神経学会日本語版用語監修、髙橋三郎ほか監訳:DSMー5精神疾患の診断・統計マニュアル、医学書院、2014
適応障害の診断は、まず「原因」を探すことからはじめます。
明確な原因があることが特徴のひとつであるためです。
また、ほかの精神疾患と鑑別しながらおこなわなければなりません。うつ病や双極性障害、統合失調症などの可能性も考えられます。
そのため「原因がわからない。でも、とにかく心と身体がしんどい」という方は、適応障害ではなく、別の精神疾患が隠れていると考えられるでしょう。
適応障害の治療法
当院での適応障害の治療では、主に以下の2つを重要視しながら患者さんと向き合っています。[1]
- 環境を調整する
- 患者さんの適応力を育てる
それぞれについて詳しくみていきましょう。
(1)環境を調整する
まずは、患者さんとの対話を重ねていき、ストレスを軽減することを目指します。
- 患者さん自身が置かれている状況を確認して、ストレスの原因を探す
- 環境を調整し改善する
もし、ストレスの原因が職場にある場合は、休職することも視野に入れて一緒に考えます。休職すると、一般的に数日〜数週間で心身の回復が期待できるでしょう。
とはいえ、休職すること自体がストレスとなる可能性があります。「会社には何て説明しよう……」「会社を休むと同僚に迷惑をかけてしまうのでは……」「一度休むと、もう戻れなくなりそう」など考える方もいます。
ストレスとなる原因から簡単に離れられるわけではありません。
そのため、本人の考えを尊重しながら、どのように環境を調整するのか一緒に検討しています。ストレスから離れられる形を模索していきます。
(2)患者さんの適応力を育てる
ストレスの原因をうまく取り除いた場合でも、今後生きていくなかで、新たなストレスに向き合わなければならないときがあります。
たとえば、仕事を変えた場合は新しい職場や別のスタッフに慣れなければなりません。家庭にストレスがあり離婚した場合は、転居や1人暮らし、新しい土地での生活にともなうストレスが生まれる場合もあるでしょう。
環境の調整だけでは難しいときは、適応力を高めてストレスに対応していくことが重要です。適応力が高まる方法として、当院では主に以下2つの方法をご提案します。
- 薬物療法
- 精神療法(認知行動療法)
ただし薬物療法は、適応障害の根本的な解決策ではありません。
あくまでも、薬物療法は患者さんが置かれている環境との折り合いを探し、実行していくための手助けとしての方法のひとつです。
さらに、認知行動療法といって、現実の受け止め方やモノの捉え方に働きかけ、こころを軽くする精神療法をおこなうこともあります。同じことが起きているにもかかわらず落ち込む方もいれば、気にすることなく引きずらない方もいます。
この認知の違いを医師や臨床心理士とのカウンセリングを通して、少しずつ改善していくのです。
どのような方法が合うかは、患者さんによって異なります。ご自身の性格や環境と向き合いながら、自分に合った解決策を探っていくことが大切といえるでしょう。
「適応障害」と「うつ病」の違い
「不安な気持ちが強くなる」「あまり眠れない」「食欲がない」といった症状は、うつ病の症状にも当てはまるケースがあります。
そのため「適応障害だと思っていたら、実はうつ病だった」という方もいるでしょう。適応障害とうつ病の違いは、主に以下の通りです。
| 適応障害 | うつ病 |
|---|---|
| ストレスの原因がハッキリしている | ストレスが少しずつ蓄積して、症状が悪化していく |
| ストレスを除去できれば、症状は回復する | ストレスがなくなっても、すぐに回復しないことが多い |
| うつ状態でも楽しいことがあると楽しめる | 一旦うつ状態になると、楽しいことがあっても楽しめない |
適応障害は「うつ病の一歩手前」とよくいわれ、似た症状があらわれます。適応障害からうつ病に移行することもあります。
ただし、適応障害はストレスとなる原因や環境から距離を置くことで、うつ病よりも比較的早く症状が軽くなる可能性があります。
うつ病の治療法とは?
現在の日本において、うつ病の治療は「休息」「薬物療法(主に抗うつ薬)」で症状を安定させたうえで、再発予防のために「精神療法」を取り入れるのが一般的です。[5]
多くのケースでは、通院しながら治療を続けます。
ただし「死んでこの苦しみから解放されたい」「生きていてもなんの楽しみも喜びもないから消えたい」などといった強い気持ち(希死念慮)があらわれている場合は、入院となるケースがあります。
ほかにも、体重が落ちている場合、ひどく興奮した状態で心臓に危険がある場合などは入院が必要となることもあるでしょう[6]
場合によっては、「電気けいれん療法」を勧められるかもしれません。また、お薬の副作用がつらい方などは、磁気を用いて脳を刺激する「TMS治療」を選択する場合もあります。
うつ病の詳しい治療法については、以下の記事を参考にしてください。
適応障害の治療をお考えの方へ
適応障害は、まずはストレスの原因を探し、患者さんにとって居心地の良い環境にしていくことが回復への第一歩です。
ストレスにうまく対処するには、適応力を高めることも重要です。
ただし、ストレスの原因と向き合うのは、簡単なことではありません。
当院では、こころの病気の臨床経験が豊富な精神科医がお話を丁寧に伺い、患者さんに治療方針をご提案します。「適応障害かもしれない?」「ストレスでこころが苦しい」などストレスと向き合う手助けが必要な方は、お気軽にご相談ください。
執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
参考サイト・文献
[2]日本における「適応障害」患者数の増加|社会政策学会誌『社会政策』第12巻第2号
