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ADHD

ADHDとは

ADHD(注意欠如・多動症)とは「注意力不足」と「衝動性・多動」が代表的な症状である発達障害です。

ADHDと診断されるのは、学童期の子どもの3〜7%ほどとされています。女の子と比べると、男の子のほうが約4倍多いとされています。

さらに、12歳より前から症状がみられることが多く、ADHDと診断されるすべての患者さまのうち75%は学童期の子どもです。具体的には、学校生活や家庭などでじっとしてられない、簡単なミスを繰り返すなどの問題を繰り返します。

ADHDの患者さまは、大人や子ども問わず「うつ病」や「双極性障害」などの精神疾患や「自閉スペクトラム症」「学習障害」「チック障害」などの発達障害を患っていることがあります。

ADHDの原因

ADHDの原因は、まだはっきりとわかっていないのが現状です。

「自分の育て方が悪かった」「自分の愛情不足が原因?」と悩まれる保護者の方もいるでしょう。

遺伝的な要因が関係しているとされているものの、子どもの育て方や愛情不足がADHDの原因になるわけではありません

現在の医療では、脳のドパミン(神経伝達物質のひとつ)の機能が障害されていると考えられてます。

ADHDの症状

ADHDの主な症状を3つに分けて説明します。

  • 不注意
  • 多動性
  • 衝動性

それぞれについて詳しくみていきましょう。

不注意

不注意は注意したり集中したりすることが難しい状態です。

だれでも集中できないときがあります。しかし、不注意の頻度が高い場合には注意してください。具体的には以下のような状況です。

  • ものごとを全体的に判断せずパッと見て判断する
  • 物をなくすことが多い
  • 忘れ物が多い
  • 単純なミスを繰り返す
  • 宿題や遊びのときに注意をし続けられない など

多動性

多動性は興味や関心が次々と移りやすく、落ち着いて取り組めない状態です。具体例は以下の通りです。

  • 目的もなく立ち上がったり歩き回ったりする
  • 落ち着かずそわそわしている
  • 授業中に友達にちょっかいをだす
  • おしゃべりをがまんできない
  • 貧乏ゆすりを止められない
  • 落ち着いて食事をとれない など

衝動性

衝動性は欲求のままに行動するため、危険なことがよくある状態です。具体例を見てみましょう。

  • 泣いたり、かんしゃくをよく起こす
  • 楽しみなことを待てない
  • 順番を待てない
  • 質問が終わる前に答えてしまう
  • ほかの子のおもちゃで勝手に遊んでしまう など

これらはADHDではない子どもにもみられる行動のひとつです。

ただし「不注意」「多動性」「衝動性」による症状で、友達とよくトラブルになったり、年齢にふさわしくない行動が見られる場合にはADHDの可能性があります。

自分の子どもに気になる症状があり不安を感じている方は一度、精神科や心療内科などの医療機関を受診してみましょう。

ADHDの種類

ADHDは主に以下の3つに分類されます。

  • 多動・衝動タイプ
  • 注意欠陥タイプ
  • 混合タイプ(注意欠陥と多動・衝動の両方)

ではそれぞれの詳しい症状の例を説明していきます。

多動・衝動タイプ
  • 多動や衝動性が強く見られるタイプで頻度は最も少ない
  • 男の子に多い
注意欠陥タイプ
  • 不注意の特徴がよく見られるが、多動や衝動による行動は少ない
  • ほかのタイプと比べると女の子が多い
混合タイプ
  • 多動・衝動・不注意のすべての特徴が見られ、最も頻度が高い
  • 男の子に多い

ADHDの症状は「なまけている」「努力不足」などの誤解を招きやすく、本人が自信を失ったり、うつ傾向になったりなどほかのこころの病気を引き起こすことがあります。

「ADHDかもしれない?」とご本人や家族の方が心配になったり、疑問を感じたりしている場合は、早めに専門家に相談してみることをおすすめします。

ADHDの診断

ADHDを持つ子どもの脳では、脳内にある物質(ドーパミン)の機能障害があると考えられています。また、遺伝的要因も関係していると考えられています。

ADHDの診断については、DSM-5(アメリカ精神医学会)に記述されており、診断基準と医師による問診で総合的に評価します。

ADHDの診断基準

「不注意」「多動」「衝動性」が同じくらいの年齢の子と比べて頻繁に見られる
複数の症状が12歳より前から見られる
2つ以上の状況において「家庭」「学校」「職場」など日常生活の障害となっている
発達に応じた「対人関係」「勉強面」「職業面」における機能が障害されている
統合失調症、うつ病などほかの精神病性障害の経過中に起こるものではない

参照元 e-ヘルスネット|厚生労働省

子どもがADHDと似た症状がある場合、「ADHDとは違う病気」「家庭環境」「虐待の経験」など別の要因が隠れている可能性があります。

そのため、ADHDの診断をする際には、これらの症状がADHDによるものなのか、ほかの原因によるものなのかを見分けることが必要です。

ADHDの治療法

ADHDの代表的な治療法を以下の5つに分けて説明します。

  • 薬物療法
  • 行動療法
  • 教育的支援
  • 心理カウンセリング
  • 代替療法

それぞれの治療法を見ていきましょう。治療法を知って、早めの治療に役立てください。

薬物療法

薬物療法は、ADHDの症状をコントロールして、日常生活を送りやすくすることが目的です。ただし、薬物療法により、ADHDそのものが改善できるわけではありません。日本で承認されているADHDの治療薬は以下の4種類です。

コンサータ
(一般名:メチルフェニデート)
  • ADHDのすべての症状へ効果あり
  • 不注意に対する効果が著名
  • 第一選択薬
ストラテラ
(一般名:アトモキセチン)
ADHDすべての症状に効果あり
インチュニブ
(一般名:グアンファシン)
多動や衝動に対する効果が高い
ビバンセ
(一般名:リスデキサンフェタミンメシル酸塩)
  • 小児期におけるADHDの症状へ効果あり
  • メチルフェニデートで効果がない場合に使用可

コンサータやビバンセは、処方医として登録された医師のみ処方できます

そのため、すべての病院でもらえるお薬ではないため注意が必要です。当院では登録医が在籍しているため、これらの薬を使うことができます。

行動療法

行動療法は、症状の管理や生活する上で必要なスキルを身に着けることが目標です。

具体的には「いい行動」にはごほうびを与え、「減らしたい行動」では過剰な叱責を避けます。子どもは、減らしたい行動をした時にごほうびをもらえないため、少しずつ「いい行動」が増えます。

問題行動が減ったり、抑制できたときにはすぐに褒めることが重要です。

さらに、ごほうびが目標数に達したら映画館に行ったり、動物園に行ったりなど、何か特別なごほうびや楽しみな行事につなげます。

これは、子どもにかかわる保護者に向けたトレーニングとしても知られています。実際に当事者の保護者が活動する「ペアレントメンター」という制度があります。

興味がある方はぜひお住まいの地域の「ペアレントメンター」についてもチェックしてみてください。

教育的支援

ADHDの治療においては学校や職場での支援が重要です。具体的な対策は以下のとおりです。

  • 机や掲示物などの場所を工夫する
  • 集中しやすいような環境を作る
  • 勉強(作業)時間を10分くらいの短い時間に区切る など

集中しやすい環境を周囲が作ることもADHDの症状のコントロールに役立ちます。

心理的カウンセリング

カウンセリングにより、自己評価を高め、ストレスに適切に対応できる方法を学びます。

「思ったことをすぐ口に出す」「すぐ物をなくす」など自分の課題と向き合い、対処法を学ぶためにも効果的です。

家族や友達の方とのコミュニケーションについて学ぶことで、人間関係の改善を目指します。また、家族や友達の方もカウンセリングを通してADHDの理解を深めることができます。

代替療法

代替療法は主な治療法ではなく、あくまで補完的な方法です。具体的には以下のようなものがあります。

  • 睡眠・食事・運動などの生活習慣を改善する
  • 瞑想やリラックスする技術を獲得する など

薬物療法や行動療法などと併用することで、症状コントロールができる可能性があります。

ADHD治療のためにTMS治療を希望されてご相談されることがあります。

当院の治療経験ではうつ状態を改善することでの特性改善は期待できますが、根本的なTMS治療によるADHDの改善は期待できないと実感しています。

ADHDとTMS治療の関わりについては、以下の記事を参考にしてください。

ADHDとTMS治療

ADHDでお困りの方へ

ADHDは適切な治療や環境により症状のコントロールが可能です。

ただし、家族や友達から正しく理解してもらえず、つらい思いをされている方がいらっしゃいます。

ご自身やお子さま方などで気になる症状がある場合には、ひとりで悩まずぜひ当院までご相談ください。

さらにくわしくADHDについて知りたい方は、以下をお読みください。

【こころみ医学】ADHDについて

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

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